経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.023 株式会社ECナビ(青柳 智士 氏)

株式会社ECナビ(青柳 智士 氏)

急速に変化し続ける事業環境に合わせて柔軟に事業モデルを変えながら、280万人を超える会員数を誇る価格比較サイト「ECナビ」を中心にサービスを提供している株式会社ECナビ。今回は同社取締役CCO(Chief Culture Officer)である青柳 智士氏に採用や企業文化の浸透についてお話を伺いました。

樋口:
まず青柳さんの “Chief Culture Officer”という役職名は非常にユニークだと思ったのですが、どのようなことをご担当されているのでしょうか。

青柳
人事本部・広報室・コーポレートデザイン室・コーポレートカルチャー室を担当しています。ブランドや価値観といったカルチャーを創造し、社内外に発信浸透させていくことをミッションとしています。ベンチャー企業にとって会社のカルチャーはとても重要です。ビジネスモデルは真似できても、カルチャーは真似できません。これを社内から社外に一連のストーリーとして伝えるような仕掛けを作っています。

企業文化を大切にしている企業はあっても、社内から社外に伝えていくところまで取り組んでいらっしゃるのは珍しいですね。どのようないきさつで社内外への文化の浸透に力を入れるようになったのですか。

当社では昨年10周年を迎えたのですが、その際に経営理念を再構築したことがきっかけです。それまでは組織ビジョンとして「シリコンバレーのベンチャーのように」というものを掲げていました。これは代表の宇佐美(代表取締役CEO 宇佐美 進典 氏)がアメリカのシリコンバレーを中心としたベンチャー企業のように、変化を恐れずにチャレンジし続けるようなオープンでフラットな会社を作りたいという想いから掲げたもので、「組織として価値観を共有し、自分たちで世界を変えていくという志を持とう」という意味を含んだものでした。
このビジョンは代表の宇佐美や経営陣には思い入れの深い言葉でしたが、一方で言葉そのものからイメージがわきにくいこともあり、社内への浸透度がそれほど高くありませんでした。社内への浸透度は採用にも影響します。例えば応募者に理念の意味を聞かれた時に宇佐美自身が語れても、社員が同じように語れなかったらそこに強みを打ち出せなくなってしまいます。より優秀な人材を採用していくための戦略を考えた時に、理念を見直し、ブランドデザインし直すことが必要だという結論に至ったのです。そこで10年という節目を迎えたことをきっかけに取締役の面々で膝をつけ合わせて話し合い、ビジョンを廃止し、SOUL(創業時からの想い)と、10のCREED(行動規範)を経営理念として掲げることになりました。


7月16日に行われた運動会の様子

ビジョンを掲げるのをやめられたのはなぜなのでしょうか。

ビジョンを掲げることが会社としての成長の足かせになってしまうと考えたからです。インターネット業界は成長産業であり、ものすごく速いスピードで進化しています。また当社は今後更に多角的にサービスを広げていこうと思っていますので、範囲を限定したビジョンを掲げてしまうと、状況に柔軟に対応できなくなってしまうことも考えられます。ですから、ビジョンは事業それぞれで掲げるのに留め、全社ではあえて持たないことにし、今後も変わらず大切にする「想い」の浸透に注力することにしたのです。

事業特性に合わせてあえてビジョンを持たないことにされたのですね。しかし、具体的な方向性を示さずに、理念に共感し、かつそれが実行できる人材を集めるというのは難しいのではないでしょうか。

そうですね。当社は今後国内の大手企業やグローバル企業と戦っていく組織になるべきだという強い想いを持っています。そのためにはエッジの立った優秀な人材を採用したいのですが、そのような人材が採用しにくい状況になっています。そのためには当たり前のことを発信し、当たり前のことをしているだけでは難しいでしょう。ですから我々の個性や世界観、経営者のスタイルを強く打ち出して、そこにフィットする人材を採用することに力を入れています。採用では業務遂行能力を見るスキルフィットと価値観を見るカルチャーフィットが大切だと思いますが、当社ではスキルフィットよりもカルチャーフィットに力を入れています。やはり価値観が合致している人材を採用した方が相乗効果として生まれるパワーが大きいですから。