経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.034 株式会社テラスカイ(佐藤秀哉氏)

「自分の能力が会社の限界」にしたくない 株式会社テラスカイ(佐藤秀哉氏)

急速に進歩するIT業界で、最先端のテクノロジーを活用したソリューションを提供している株式会社テラスカイ。2011年に設立5周年をむかえた同社の代表取締役社長 佐藤 秀哉氏に技術者を中心とした組織作りついてお話を伺いました。


樋口:
御社は今年で設立5周年を迎えられていますね。組織作りというのは長期的な視点が必要だと思いますが、御社はどのように組織を作っていきたいとお考えですか?

佐藤:
日本社会の場合、残念ながらまだ人材が流動化しているとは言えません。一口に「優秀」と言っても色々な定義がありますが、私どものような規模の小さい会社が優秀な人材を採用するのは難しいのが実態です。それを打破する方法として、2つの方法に取り組んでいます。一つは中途採用での認知度を上げて、より多くの人に興味を持ってもらい、良い人材に来ていただくこと、もう一つは新卒を採用することです。

新卒採用は採用から一人前になるまで数年かかる長期的な投資です。特に技術が必要な職種の場合、中途採用の優位性が高いとも思うのですが、なぜ新卒採用に取り組まれるのでしょうか。

私たちの属するIT業界で活躍するには若いうちにかなりの時間をかけて基礎を作らなければなりません。特にエンジニアは20代の努力や経験がその後のキャリアを左右すると言っても過言ではなく、40歳から始めたのでは、残念ながらいくら勉強をしても大成しないのです。ですから、20代をどのように過ごしたかが非常に重要なのです。もちろん他の企業で教育を受けた方が中途として入社してくださると、初期教育が必要ないというメリットはあります。しかし日本の場合はいくら転職が一般化したとは言え、転職を選択するにはそれなりの理由があります。いい理由で転職するケースよりも、やはり後ろ向きの理由が多いのが実態ですし、そのような人は20代の過ごし方も様々です。そこで中途採用だけではなく、新卒にもチャレンジしていこうと新卒採用を始めました。

新卒採用で成長する可能性のある人材を確保し、20代のうちから育てていくということですね。

また、新卒採用には可能性のある人材の確保だけではなく、組織の活性化も期待しています。後輩が入ってきて自分が指導する立場になると学ぶことは多くあります。たとえば、指導スキルの向上はもちろん、教えることで自分の知識をまとめなおしますので自身のスキル向上にもつながります。またそれによって社員のモチベーションアップも期待できます。しかし、中途採用ばかりしているといつまでたっても経験のある上の年齢層ばかり入社することになりますので、若手の育成を考えるとあまり良い環境とは言えません。もちろん新卒入社社員が戦力化するまでには中途入社社員よりも時間もコストもかかりますが、私は社員には「この会社でずっと働きたいな」と思ってほしいのです。ですから当社では少人数の採用を毎年続けていくことが現存の社員に成長の場を与え、組織を活性化させるのに適しているのではないかと考え、取り組んでいる次第です。


ところで新卒採用ですと中途採用とは異なり、スキルという指標では測れないと思うのですが、どのような人材を採用したいとお考えですか。

私自身は根本的な人としてのマインドを見ていますが、最重要視しているのは社員が一緒に働きやすいか、ということです。ですから実際には私の意見よりも役員2名の意見を尊重しています。役員が見ているのは深く物事を追求できる人材かどうかということです。実際に採用された人材を見ると、みんな全体的なバランスが良いというよりも、どこか尖ったところのある人材です。

社長は大きな指針だけ出し、最終的には社員の方々に任せていらっしゃるのですね。

実際に過去に何人か独立を志望する方が応募してこられましたが、重要なのはその理由です。独立をしたい、という人の考えを突き詰めていくと、大物になりたい、お金持ちになりたいという軽い気持ちの人も少なくありません。一方で何かに対してこだわりがあり、それを実現するための手段として独立を選ぶ人もいます。なかなかそれを説明できる人は多くありませんが、話を聞いていて後者の方だとわかるといいなと思いますね。ただし独立を志向している人には、まずは組織の一員として所属し、組織や経済、社会の仕組みを理解した上で独立することを勧めています。私自身も、IBMに14年間勤めていましたが、そこで学んだことがとても多いですから。会社の仕組みにしても、評価制度にしても、仕事の内容も当社の基本的な考え方は全てIBMに近いです。また自分の仕事の進め方や社会に対する価値観もIBMでの教えに影響されていると思います。また同社ご出身の先輩が多いといった点でもIBMに入社してよかったと思っています。