経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.036 ラルフローレン株式会社(上保篤信氏)

人が育たなければ、ブランドも会社も育たない ラルフローレン株式会社(上保篤信氏)

2009年4月、日本でラルフローレンブランドを展開する3社が統合され、誕生した新生ラルフローレン・ジャパン。新しい方向性に向けた組織体制作りに腐心するラルフローレン株式会社 バイスプレジデントの上保 篤信 氏にラルフローレンにおける新卒採用の位置づけや、人事の今後の方向性についてお話を伺いました。


樋口:
企業説明会の参加率も高いようで、新卒採用が順調に進んでいらっしゃるようですね。背景には何があるとお考えですか。

上保:
ブランドの強さもあると思いますが、当社は昨年より新卒採用を始めたばかりなので、「ラルフローレンも新卒採用をするんだ」と興味を持った学生もいると思います。新卒一期生や、二期生というのは、興味を惹きますから。

そうでしょうね。ラグジュアリーブランドというと中途採用が多いイメージがありますが、新卒採用をされたきっかけをお話いただけますか。

どこの会社も考えることは同じだと思うのですが、定期的に新しく若い人が入ってくると、企業の文化が随分と変わり活性化されます。また、既存の社員に対しては「新卒の採用を始めるということは、長いスパンで人材の活用を考えているんだ」というメッセージにもなります。特に当社の場合、2009年に3社が統合されたばかりでしたので、一つの会社としてまとまりを作るためにも早く新卒採用をした方が良いと思い、去年の秋に急いで実行に移しました。11年新卒採用と12年新卒採用をほぼ同時にスタートさせたので、冷静に考えると無茶な話だったようにも感じますけどね(笑)。

今の会社のステージを見て、戦略的に新卒採用を始めるという判断をされたのですね。

マーケットに対してのメッセージと、社内に対してのメッセージの双方を意識していました。結果的にどちらに対しても有効だったと思っています。

11新卒の社員の方は既に入社して働かれていますよね。現場での評価はいかがでしょうか。

元気がいいと評判です。現場の社員からすると、これまで7、 8年新卒を採用していなかったこともあり、良い刺激になっているようです。

合併したばかりというのは組織として難しいステージだと思うのですが、その中でどのような人材を採用したいとお考えでしょうか。

私がいつも言っているのは、“セルフスターター”である人材です。これは当社に限ったことではなく、皆さんも同じことをお考えだと思いますが、自分で考えて自分で行動できる人材は良いですね。


そこがポイントだとお考えなのは、今までの上保さんのご経験からなのでしょうか。

私は当社に来て今年で2年目です。新卒で入社した外資系企業では初めは営業をしていました。そこから異動し、人事に携わるようになったのは21年前からです。人事に異動した当初は、自分で考えて行動せず、指示がなければ動かない人材の多さに驚きました。営業職はスケジュール管理に始まり、ほとんど全ての仕事において自分で考えて動きます。一方、同じ会社でも人事部は年功序列で、男性だけ、女性だけが固まって組織が分かれていたりと、本当に古い日本の会社のようだったのです。それを見て「この状態では会社は伸びない」と危機感を感じました。そこで生意気盛りの30代前半だったこともあり、色々と進言して変えてしまいました(笑)。

どのようなところを変えたのですか?

以前勤めていた会社での話になってしまいますが、就業規則にはないおかしな慣行が出来上がっていました。たとえば、「8時まで残業したらタクシーを利用して帰宅してもよい」というような慣行などです。周りからは反発も多かったですが、結局これは廃止しました。このようにおかしいことを一つ一つ直してくというのは大切だと思います。正しいことを正しくやるようにしないと会社は伸びないというのは、当時から変わらない私の基本的な考え方です。