経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.049 協電機工株式会社(城戸昌子氏・城戸しの氏)

会社を強くするための改革のカギは価値観の共有と真似 協電機工株式会社(城戸昌子氏・城戸しの氏)

昭和25年以来、地元・熊本の「インフラ」を支えるために地域と共に発展し、歩んできた協電機工株式会社。地域密着の企業として、60年以上の歴史と伝統を持ちつつも、新しいことに挑戦し続ける同社代表取締役副社長 城戸昌子氏と管理グループグループ長 城戸しの氏に会社を強くするための人材に対するこだわりについてお話を伺いました。

会社を好きになって勤めることが、本人の幸せと成長につながる

樋口:
御社はすごく社歴が長くて、熊本では有名ですよね。御社の主力事業の総合設備工事は技術職の方が中心として活躍するお仕事だと想像します。通常技術職の場合工業高校や高等専門学校などからの採用が多いと思うのですが、御社では4~5年前に大卒・大学院卒の新卒の採用を始められたと伺いました。まず、大学新卒者の採用や教育に対するこだわりについてお話を聞かせてください。 

城戸昌子:
私どもは創業が昭和25年で、地元でも歴史が長い方です。創業当初は電気の設備業でしたが、途中で総合設備に事業を広げてまいりました。そのため、もともとは毎年工業高校あるいは技術訓練校あたりの学生を採用し、教育しておりました。しかし、バブルの時期は転職が容易だったこともあり、半年から1年で「考えていたことと違う」と言って離職してしまう社員が増えてしまったのです。当時は徒弟制度のように3~5年ほどかけながら一人前に育成していましたから、短期間で離職してしまうことが相当な痛手でした。そこで採用・教育方針を2009年より改め、学部や男女を問わず、私どものいわゆる経営理念について、ベクトルに合った方に入社していただくことにしたのです。協電機工が好き、協電機工のやっていることが好き、あるいは、藤本将行という社長の考えが好きといったように、私どものファンになっていただいた方に入社していただく。そういう気持ちを持って勤めることが本人の幸せにつながり、ご家族の幸せにもつながり、お客様にも安心と安全と感激を提供でき、ひいては利益を生み出す。このように順当に育ってもらいたい、と思った結果、大学・大学院の新卒者の採用に傾いてきました。
大学新卒者の場合は、内々定、内定の期間が長くありますので、いろいろな研修を通じて頻繁に会社に出てきていただくことができます。その中で経営理念や社是、社訓を理解し、会社の雰囲気を味わっていただくことができます。4月1日に入社する際は不安なく、自分のすべきこと、しなければならないことに取り組めるようにしています。 

樋口:
採用方針の転換によって何か変わったことはありましたか?

城戸昌子:
会社が目指しているものを分かりやすく、折に触れて社員さんやご家族に発信をするようになり、まずは会社が元気よくなりました。また、頻繁に人事の異動を行うようになったことから、縦横の妙なしがらみが取れたことはもちろん、部署にこだわらず活躍できる人材が成長してきています。工事の部署にいてずっと作業現場だけ、総務の部署にいてずっと後方支援や総務・人事関係ばかり、あるいは現場監督の部署にいるばかりでは、考えや視点が凝り固まってほかの仕事が見えなくなるんですよね。本来は、人に仕事を付けるのではなくて、たくさん現場がありますので、そこに人を付けていくのがあるべき姿だと思っているので、何でもできるように育てたいのです。
弊社の就業規則60歳以降70歳まで継続雇用をするとなっていますので、65歳になっても働ける会社です。しかし、作業現場でしか自分の力が発揮できないとなると、年を重ねるとどうしても体力衰えますから、現場でできることが少なくなってしまいます。ですから、いろいろな部署にいて経験をしていただくのは大事なことだと考えています。

樋口:
幅広く能力を身につけてもらうことで長い間働く環境を整えていらっしゃるのですね。今、新卒で入られた方は何名ぐらいいらっしゃるのですか。

城戸しの:
2009年から始めて、9名入社したのですが、今は6名です。中には入社後に違う分野に興味を持つ方もいるので、難しいなと日々感じています。

樋口:
定着は多くの経営者にとっての課題ですね。私は会社が21歳、22歳の大学新卒者を雇って、何十年も人生を縛る時代は終わったと思っています。新卒一括採用は企業にとって都合のいい話ですけれども、働く本人にとってはリスクが多すぎます。将来のことが分からない中でどこか決めなければいけないわけですからね。実際、日本においても本当に優秀な子から辞め出しています。昔のような辞め方ではなくて、自分の人生を考えた前向きな辞め方です。
会社が人材を定着させていい会社をつくろうという動きと個人が輝きたいという意識の競争の中で勤める期間が決まる、そんな時代が来たような気がします。