経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.063 一般社団法人日本ラグビー選手会 会長(廣瀬 俊朗氏)|

自分なりの志を持つキャプテンこそがチームを内部から強くする  一般社団法人日本ラグビー選手会 会長(廣瀬 俊朗氏)

成長にこだわる性格と、周囲と仲良くできるスキル

樋口:【キャプテンに選ばれる理由】
廣瀬さんはこれまでいくつかのチームや組織で、キャプテンやリーダーの役割を指名されてきたかと思いますが、ご自身で、なぜ自分が選ばれるとお考えですか。また、廣瀬さんご自身が次の世代から指名する立場にそろそろなるのかなとおもっているのですが、組織の中で何人かのメンバーを見た時に、どのような方を選ぶのでしょうか。

廣瀬: なぜ選ばれたのか、本当のところはわかりませんが、監督からキャプテンをやれと言われてきました。自己分析として、選ばれた理由の一つは「成長に対するこだわり」だと思います。常に「これでいい」と思わず、いつも勉強していきたい、学びたいと思っています。あとは性格かもしれませんが、私は人から嫌われるのが嫌いで、みんなと仲良くやっているので、あまり敵みたいな人がいません。それが選ばれる一つのポイントかもしれないとも思っています。選ぶ立場になったら、ですか。どうやって選んでいくのでしょうか・・・。「志」は絶対に気にします。どんな組織かによって変わるとは思いますが。あとはバランスでしょうか。リーダーの下の「右腕」や「オーガナイザー」など、バランスを見た上で考えないといけないような気がします。あとは、人間的に魅力があることも大事でしょう。この人なら任せられるとか、ついて行きたいと思えるかどうか、でしょうか。

「キャプテンは嫌われてはいけない」「リーダーは嫌われてもいい」

樋口: 【キャプテンとリーダーの違いは】
リーダーとして厳しい練習をやる背中を見せるというよりは、自分が成長したいからやっているわけであって、ついて来いというわけではないのですね。キャプテンとリーダーの違いについては、廣瀬さんの中ではどんなイメージですか。

廣瀬: 高校日本代表のキャプテンになったときは大変嬉しかったし、大学も日本代表も、ずっと誇りに思ってきました。しんどいですが、得られる喜びも大きいですし。ただ、僕自身ずっとキャプテンをやってきましたが、キャプテンのあり方について教えられたことはないです。キャプテンに関わる論文や研究も、あまり多くないです。逆に、リーダーに関することはたくさんありますが。私の持論ですが、「キャプテンは嫌われてはいけない」「リーダーは嫌われてもいい」と思っています。もしキャプテンが嫌われたら、一緒に戦う中でみんながついて来てくれないと思います。でもリーダーは嫌われても、結果を出してくれる人であれば気にならないです。私たちも当時エディーさんのことを好きだったかどうかわかりませんでしたが、「あの人についていけば間違いない」というのはありました。リーダーと比較して、キャプテンは現場じゃないですか。現場ならではの楽しみがあります。その経験が、次にリーダーになるときにどう活きるのか楽しみです。


失敗から学んだキャプテンシー

樋口:【キャプテンシーについて】
なるほど。ではキャプテンシーについて、これまでご自分でどのように身につけてこられたのか教えていただけますか。
(注※キャプテンシー:キャプテンとしての指導力や、チームを統率する力のこと)

廣瀬: 失敗しながら、いろいろ試行錯誤してきました。同期の奴に「去年どうみえた?」とか「俺がどういう風にしたらよかったと思う?」とか、聞きながらやってきました。成長のために、フィードバックは必要です。そこで、いい関係が築けて絆が深まったら、それはチームにとってもいいことだと思います。先ほど嫌われたくないと言いましたが、良い顔をしすぎても逆効果です。だめなものはだめだと言わなければいけないです。憧れの先輩を真似しようとして失敗したこともありました。体格や声が違うように、人それぞれリーダーシップのとり方も違うと、すごく勉強になりました。また、42歳くらいまで現役で活動されていた東芝の先輩である松田努さんが、最後の方なかなか試合に出られなくても顔色一つ変えずにやるべきことをコツコツやっていた姿を見て、自分もああなりたいと思って、勉強させてもらったと思います。