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Vol.008 株式会社T4C(青木 孝博 氏)

樋口:
御社はユニークな施策や制度を多数導入されていますが、その中で特に自慢の制度をご紹介いただいてもよろしいでしょうか?

青木:
社員からT4Cの次のビジョンや事業構想をはっきりと打ち出してほしいという要望があったのを機に、「未来部」という会社のグランドデザインをする部署を作りました。ビジョン策定というと、一般的な会社であれば役員プラス幹部クラスが集まるのが一般的ですが、当社の場合は「経営陣は10年後にいません。10年後にいるのは皆さんなので、皆さんで作ってください」ということで、40歳未満の社員限定で「5年後・10年後のグランドデザインをする」というミッションを掲げた未来部を取締役会直下の組織として創設しました。

面白いですね。今現在、未来部の活動はどこまで進んでおられるのですか?

活動開始から1年が経ちましたが、現在は、これまでの資産・資源の整理を通じて、企業理念をこう掲げてはどうかという提案フェーズまでようやく辿りついたところでしょうか。

理念についても触れてきたのですか?

はいそうです。どちらかというと新規ビジネス提案というよりは、T4Cはこうあるべきだ、こういう会社にしたいというのが大まかな主旨でしたね。毎年恒例のサプライズ企画としては、本人に内緒で入社式の写真に社長のメッセージを添えて、ご家族にお送りするというようなことも続けています。

入社の時にお送りしているのですか?

入社式の翌日には発送しています。やはり社会人の第一歩をご 家族も楽しみにしていらっしゃるわけです。実際には地方出身者も多く、ご両親をお招きすることは難しいのですが、入社式の様子や緊張した面持ちをご両親に見てもらいたいなあと思いまして。実際、お礼のお手紙をいただくこともあります。設立して10年にも満たないベンチャー企業で、もちろん名前も聞いたことのない会社ですから、何でこの会社を選んだのだろうと不思議がって当然ですよね。こういった企画を通じて、 T4Cのやり方や想いというものを少しでもご理解いただいたり、安心してもらえればと思っています。こうしたことを通じて、我々と新入社員とそのご家族の方々までもが繋がりを持てたら嬉しいなあと思いながら毎年おこなっています。こうしたことはお金をかければいくらでもできるとは思いますが、逆に今は手作り感というものを大事にして、こうした仕掛けを続けています。

素晴らしいですね。弊社は社員総会に内定者や若手のご両親を呼んだりしています。

当社でも考えたことがありますが、実際にはいかがですか。

内定式にご両親を呼ぶというのは一時期流行りましたよね。私は本当に効果があるのかなと疑問に思っていましたので、自社でも試してみることにしました。ご両親から見ると、何でこんな会社にと思うだろうと思いましたので、会社案内をして、食事をしてホテルに泊まっていただきました。結果として、ご両親を招待するということ自体は、内定辞退を減らすなどという瑣末な目的からすると費用がかかる割にはあまり効果がないということがわかりました。しかしそれ以上に、こちら側の責任感が増しました。それは内定者一人一人の育った環境やご両親の深い愛情を感じることができ、企業と個人との出会い、ご縁を感じずにはいられなかったからです。それ以降は形式ばった場をわざわざセッティングするのではなく、社員総会のような普段のイベントにご招待するという形でやっていますが、違和感なくカルチャーになりつつあるかなと思います。    
経営者としてみると、若いスタッフを採用するということは、適当なことはできないな、責任重大だなといつも実感しますね。

親御さんから預かるという感覚になりますよね。私も手紙が来た時はそう感じました。

御社の事業形態は顧客先常駐スタイル中心だということで苦労も多いと思います。そうしたご苦労の中できっとこうしたことをやられているのだろうと思うのですが、常に顔を合わせるわけではない常駐スタイルだからこそ注意をしたり、こだわっていることがありましたら教えていただけますでしょうか。

色々な施策をおこなっていますが、まだ答えが出ていないというのが現状です。しかしベースにあるのは、普段顔を合わせる機会が少ないメンバーと顔を合わせるとき、あるいは我々から何かを発信する時に、「うちの会社、以前と変わったな」という変化を見せてあげたい、あるいは変化から何かを感じ取ってもらいたいと考えています。それが社内報や社員総会であったり、東京都のワークライフバランス認定企業として表彰されということになると思います。社員にとっても嬉しくないはずはないですから、そうした機会を積極的に活用することで、「自分たちがいない間に会社も良い意味で変化しているな」「良い方向にますますきているな、ブラッシュアップしているな」という姿をどう見せるか、感じてもらえるかということに注力しています。あとは日々のコミュニケーションの強化でしょうか。さまざまなコミュニケーションツールを活用しながら、2ウェイ、 タテヨコナナメのコミュニケーション強化ということを色々と試行錯誤している段階です。

私自身も試行錯誤して一番悩んでいるところですが、やはりリアルなコミュニケーションに勝るものはまだ見つけられないということに尽きるわけですね。

そうですね。あと、弊社は新卒採用を始めて5期目になりますが、新卒のメンバーには「君たちより優秀な人材は採用するけれど、優秀ではない人材は採用しない」と公言しています。そうした煽りを入れることで、「会社のレベルが上がっているな、自分も成長しないとやばい」と奮起してくれたらと思っています。実際、入社式のスピーチなどを聞いていると、先輩より上手なのですよ。ですから、昨年より採用レベルが上がったと勝手に私は言いふらしています(笑)