経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.018 株式会社山櫻(市瀬和敏 氏)

株式会社東レ経営研究所(市瀬常夫 氏)

名刺やはがき、封筒など紙製品の老舗企業として知られる山櫻。その創業から大切にしている人材へのこだわりや時代に合わせて進化する育成の取り組み、社員に対する想いを同社専務 市瀬 和敏 氏にうかがいました。

樋口:
御社は非常に歴史が長く、長年培ってきた社内で大切にされているこだわりがあるのではないかと思います。まずは採用面でのこだわりについてお聞かせ願えますか。

市瀬
採用においてかねてから重視しているのは「誠実さ」です。当社では、創業社長時代から「まず人を売れ」という言葉を長い間引き継いでいます。その背景には主なお客様が印刷会社のオーナー経営者だということがあります。そのためオーナー経営者との関係構築が仕事をする上での重要なポイントになります。このように、人間性が仕事の成果に大きく影響するので「誠実さ」を長い間採用の基軸としています。

お客様に可愛がられそうな人材を採用しているということですね。

そうです。当社は名刺や紙製品を取り扱っておりますので、営業社員の役割は当社のファンを増やすことなのです。そのため、「人を売ることができる」ということは重要な軸なのです。

一方で、IT化やグローバル化の影響を受け、時代が大きく変化しているとも言われています。その中で何か変化に合わせて変えていらっしゃることはありますか。

主体性を重視するようになったことがあげられます。当社は来年創業80周年を迎えますが、平成9年に亡くなった創業社長は、亡くなる直前まで強いリーダーシップを発揮し、現役で社長を務めあげました。そのため、それまでは社長からの指示を実行する力が重視されてきました。
しかし、今の時代は変化に対応するために主体的な人材が何よりも求められていますし、当社としてもより多くの方に当社の製品を使っていただく新しい機会を創出していきたいと思っています。そのため、指示を待つのではなく自分で考え、実行できる人材に評価の軸を少しずつ変更していかなくてはいけないと考えています。

採用を通じて、新しく「主体的に行動する」という文化を創っていこうと考えていらっしゃるのですか。

そうです。また育成の場面においても、主体性を引き出す取り組みをおこなっています。
その一つが役員に対するプレゼンテーション研修です。これは20代後半から30代半ばまでの若手社員3~4チームにプロジェクトを任せ、役員に提案をさせるという研修です。10年近くこの取り組みを続けてきているのですが、この研修を通じて若手社員が非常に成長したと実感しています。

そのような取り組みを始められたきっかけは何だったのでしょうか。

先ほども申し上げた通り、それまで前社長が強いリーダーシップを発揮していたので、トップダウンの色が濃く、下から意見をあげることが難しい企業体質だったのです。こうした現状に対し、私が入社をした際に「意見はあるけれども言えない」という風潮は変えていかなければならないと感じたことがきっかけでした。研修の内容は、実は私の前職での経験がベースになっています。前職では「とにかく自分で考えてやりなさい」という考えの上司のもと、チャンスを与えていただきました。このことが自分自身を成長させ、結果的に成果を残すことができた要因だと思っていますので、若手社員に対しても自分で考え実行する機会を与えることが重要だと考えたのです。