経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.018 株式会社山櫻(市瀬和敏 氏)

株式会社山櫻(市瀬和敏 氏)

樋口:
そのようなマネージャー候補に対し、市瀬専務ご自身からアドバイスをされることはあるのでしょうか。

市瀬
私自身非常に相手のことが気になってしまう性分なので、毎日メールを入れたり、そっと電話をしたりしています。

かなりまめにコミュニケーションを取っていらっしゃるのですね。仕事をしている時間を全部で10だとすると、そのうちコミュニケーションに割いている時間は何割程度でしょうか。

8割程度だと思います。他の社員に実務を任せるための仕組みを作ってきたこともあり、ここ3、4年はコミュニケーションに時間を割けるようになってきました。もともとはプレイヤーでしたから、自分でやるということが中心でしたが、立場が変わったことで、周りに活躍してもらうための仕組みを作ることが必要だと感じるようになりました。今の自分の仕事は会社の潤滑油になることですので、できるだけコミュニケーションに時間を割くようにしています。

8割というのはこれまでにお会いした中で一番多いです。市瀬専務ご自身、人とコミュニケーションをとることがお好きなのでしょうね。

もともとコミュニケーション自体は自分ではどちらかと言うと苦手な方だと思っていますが、社員が成長したり幸せになったりする過程を見たり、関わったりすることが好きなのです。

それでは「会社は社員を幸せにする場」というイメージが強いのでしょうか。

そうあるべきだと思いますし、社員が活き活きとした表情で仕事をしていることは会社にとって非常に重要なことだと考えています。 たとえば、先日当社の工場を40年近く営んだ建物から新しく完成した建物に移転しました。それまでの工場は雨漏りがするような古い建物で、空気も何となくどんよりしていたのですが、新しい建物に移ったことで社員に変化が生じたのです。小さなことではありますが、社員が進んでごみを拾うようになり、身だしなみも整え、ミーティングもおこなうようになり、何よりも笑顔が見えるようになりました。工場の移転という環境の変化をきっかけに、社員が笑顔で色々なことに積極的に取り組むようになったのです。このような心の変化を見ることが私の喜びです。

社員の方を非常に大切に想っていらっしゃるのが伝わります。

同じように社員に活き活きと働いてもらうための取り組みの一環として、女性社員への対応に力を入れています。先ほど出たコミュニケーション能力のベースには周囲への気遣いがあると考えていますが、そうした能力は男性よりも女性の方が高いと感じているからです。たとえば、お客様をお迎えするときに玄関までお迎えする、重たそうな荷物をお預かりするといった細かな気遣いがコミュニケーションを円滑にするのです。このような気遣いができる人材は会社にとって財産です。しかしこれまではその点をあまり重要視していませんでした。そのため、このような気遣いから生じる気付きを会社として吸い上げたい、気遣いのできる人材に一人でも多く活躍してほしいという想いから全国の事業所の女性社員100名と少人数の食事会を行いました。
実際に話してみるとやはり優秀な社員が多く、樋口社長の著書にもある「女性が活躍する会社は伸びる」というのはその通りだと思った次第です。

100名全員と対話をするとなると相当なお時間がかかったのではないかと思います。しかし市瀬専務が直接対話の機会を持ったからこそ「女性社員の方にもどんどん活躍してほしい」というメッセージが浸透したのでしょうね。 市瀬専務のお話をうかがっていると、会社と社員を愛する気持ちがひしひしと伝わってきました。本日は貴重なお時間をどうもありがとうございました。

CompanyData

株式会社 山櫻

■会社名:株式会社 山櫻
■代表者:市瀬 豊和
■設 立:昭和23年2月
■所在地: 東京都中央区新富2-4-7
■URL:http://www.yamazakura.co.jp/
■事業内容 :
 1.紙製品の製造及び販売と、付帯する事業。
 2.パソコンによる名刺・はがき作成システム、ダイレクト製・刷版材、プリンタ等の開発と販売。
 3.オンデマンドによるデジタルカラープリントのサービス。
 4.インターネット利用事業。