経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.025 株式会社ファンケル(松ヶ谷明子 氏)

株式会社ファンケル(松ヶ谷明子 氏)

樋口:
100パーセントとは他の企業でもなかなかない数値ですね。何か工夫されていることがあれば教えていただけますか。

松ヶ谷
もともと創業者の池森が社員を本当に大事にしており、以前から多かった女性社員のために、1996年当時の本社ビルの近くに「ファンケル保育園」というものを作ったくらい、以前から女性が働きやすい環境づくりは進んでいました。その流れを汲んで、2006年に「働く女性プロジェクト」を発足させ、出産後も就業が継続できるように産休や育休をはじめ、子どもの看護休暇など、さまざまな育児支援制度を整えました。また、育児休業からの復帰をスムーズにするために、インターネットを通じたオンライン講座などを会社負担で受けることができます。復帰後も小学校卒業時まで時短勤務ができる育児短時間勤務制度や、19歳の誕生月まで子ども一人につき毎月10,000円の手当が支給される「よいこ手当」などがあります。出産や育児というステージを迎えた女性にとって、仕事と家庭の両立は非常に重要であり、会社としても貴重な労働力ですから退職という選択をしなくてもよいための取り組みには非常に力を入れています。
また、ワークライフバランスは女性だけのものではありません。男性も「配偶者出産支援休暇」という制度を利用し、出産後3ヶ月以内に最大5日間の休暇が取れることになっています。企業として子育て支援に取り組んでいると厚生労働省に認定された証である「くるみん」も取得したことで男性の意識も変わってきていますね。

一方でお母さん社員が多いと、やはり周りのフォローも大変なのではないでしょうか。

それが当社の「優しさ」なのです。当然産休でお休みをされているとその人の仕事を誰かがやらなくてはならなくなるのですが、それを周りの人が分担して補い合っています。ただし、この負担を担ってくれている人たちのがんばりを当然のこととしないで、いかにバックアップをおこなっていくかがこれからの人事の課題だと考えています。

人事の課題というお話が出ましたが、今後の松ヶ谷さんの人事部長としてのビジョンを教えていただけますか。

これからはどの企業も海外に目を向けなければならないですよね。当社でも現在トップが打ち出している方向性のひとつに「グローバル化」があります。私の中で描いたビジョンを具体的に人事戦略化し、人事部として打ち出していく予定です。

それは事業戦略にかなり近い人事戦略ですね。最近人事がダイナミックに事業に絡んできたケースを見聞きすることが増え、人事に携わる者としてうれしく思っています。

そうですよね。まだまだ試行錯誤中なのですが、私の理想はトップが次にこういうことをやるだろうと予測をした上で、事前に動ける人事です。トップが方針を出したときに、「こっちへ進むならこの人材ですよ」「こちらにするのであればこういう人材がおりますよ」というふうに提案したいですね。方針が出てから慌てて中途採用したりする人事はこれからは求められないと思います。 また、社内でのキャリアについても更に強化していきたいと考えています。これまでの人事異動は社員にとって「本人の成長につながるのか」が見えにくかったのが実情でした。ですからきちんとしたキャリアパスを会社としても描けるように、現在システムを構築中です。

では今まさに理想に向けて動き始めたところなのですね。大切に守るところと変えていくべきところが明確にされており、現在大きな変革のステージに来ているのですね。ぜひまたその後の取り組みや結果についてお話を伺えればと思います。本日は貴重なお話をありがとうございました。

 

 

CompanyData

株式会社ファンケル

■会社名:株式会社ファンケル
■代表者:代表取締役社長執行役員 成松 義文
■設 立:1981年8月18日
■所在地:神奈川県横浜市中区山下町89-1
■URL:http://www.fancl.co.jp/
■事業内容 :
 ・化粧品事業
 ・栄養補助食品事業
 ・その他の事業(発芽米、青汁、快適肌着)