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株式会社KUURAKU GROUP(福原裕一 氏)

樋口:
面接や仕事の中のどのようなことから「やり抜く力」をご判断されるのでしょうか。

福原
苦しいときに逃げるのか、立ち向かうのか、どちらの行動を取るかが大きな判断材料になります。店舗で働いていると、お客様からクレームをいただくことももちろんあります。そうした時に、すぐに上司に頼る人よりも、まず自分で何とかしようとお客様に話を伺いにいく人の方がやり抜く力はあると判断できます。当社の場合、やり抜く力は店長としてどの程度自分の仕事や役割に責任感を持てるかによって変わってくるように感じています。

私もやり抜く力や責任感はその後の成長を左右する重要な要素だと考えています。一方でこれらの力は入社後に身につけるのは難しいとも感じているのですが、どうしたら身に付くとお考えですか?

それまでに生きてきた環境によって左右されるのではないでしょうか。学生時代に責任ある役割を経験したかどうかによっても変わってくるでしょう。まだはっきりと確信しているわけではありませんが、社員を見ていると、兄弟構成も責任感に大きな影響を与えているように感じています。長男長女の場合、下の兄弟が生まれると周囲から「お兄ちゃんだから、お姉ちゃんだから下の子の面倒を見なさい」と言われて育ちます。そういった環境の中で、「自分は上の立場なんだ、自分が責任を持たなくてはいけないんだ」という自覚が芽生えるのではないでしょうか。

やはり、環境による影響は大きいのでしょうね。余談ですが、私自身はこれまでに様々な人を見てきて、成長する人材とそうでない人材の間には「自尊心と向上心のバランス」に違いがあると思っています。人は周りの環境や上司との相性、タイミングによって伸びたり伸び悩んだりを繰り返すものです。その成長を妨げる要因が自尊心だと思うのです。向上心には色々なタイプがあるものの、全くないという人は少ないです。一方、自尊心の強弱は人によって大きく異なります。これまでは自尊心が低い人の方が成長できると思っていたのですが、ある一定レベルまでは自尊心の低い人材の方が伸びやすく、それを超えると逆に自尊心が高くないと務まらないのかな、と最近では思うようになりました。

私も自尊心はとても大切な要素だと思っています。自尊心が高くなければ、人を認めることもできませんから。当社でも毎年新入社員が入社すると、自尊心を高めるために自分が生まれてきたときのエピソードや名前の由来を調べてきてもらっています。改めて自分の生まれた時のことを聞くと、「大変な出産だった」「名前にはこのような子に育ってほしいという意味があった」などのエピソードが出てきます。こうした取り組みを通じて、自分が愛されて生まれてきたのだなということを受け入れられるようになると、少しずつ変化が出てくるのです。

今のお話に通じるところもありますが、福原社長のご著書の中に、マズローの欲求5段階説のお話がありました。欲求の5段階には「生理的欲求」「安全の欲求」「所属と愛の欲求」「承認の欲求」「自己実現の欲求」がありますが、会社では「承認欲求」と「愛・所属欲求」を満たすことが必要だと書かれていました。私自身これまで「自己実現」ばかりに注意がいっており、この二つの欲求に配慮が足りていなかったので、目が覚める思いでした。

私には、起業して一度失敗した経験があります。その時は自己実現欲求のみで突き進んでおり、社会に対してどういう状態を築けば自己実現につながるのか、ということも分からずにやっていたことが失敗の要因だったと思います。この失敗を通じて自己実現欲求だけではもろく、成し遂げるのが難しいことなのだと気づいたのです。また、相手から感謝していただけたり、役に立った経験こそが自己実現につながるのだ、ということにも気が付きました。ですから当社では、会社として「承認欲求」と「愛・所属欲求」を満たせるような環境を提供しているのです。

福原社長はお客様や社員のことを深く考えていらっしゃるな、という印象を受けます。実際に働いている時間を10とすると、どの程度社員のことに割いていらっしゃるのでしょうか。

7割くらいだと思います。実際に使っている時間は違うにしても、思考の基軸は社員にあります。日常では店舗の社員とはほとんど会う機会はありませんが、たとえば月に1度会ったときに必ず声をかけられる状態にするために、日々情報収集をして、コミュニケーションの質が高く保てるように心がけています。具体的には店舗の日報を見ながら、どんな失敗があったのか、良いことがあったのか、アルバイトをどのように育成しているのか、といったことを頭に入れるようにしています。