経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.031 株式会社RYコーポレーション(横山藤雄氏)

大事なのは、スキルよりもスタンス 株式会社RYコーポレーション(横山藤雄氏)


樋口:
飲食業をある規模でやっていくには価値観で結びつかないと難しいのでしょうか?

横山:
やはり理念・価値観だと思います。我々の仕事はお客様商売ですので、お客様に対して喜んでもらいたいという価値観、たとえばお客様が一人でいらっしゃった時に、2人前のサラダを瞬時にメニューにはない1人前で提供できるような価値観を持てるかどうかが大事だと思っています。お客様に言われて対応するのは、仕事ではなく作業でしかありません。お客様に言われる前に、お客様がして欲しいことをいかに先読みできるかどうか。こういう価値観を持っている人材と仕事をしていきたいと思っています。そういう部分を大事にしていくことで、会社の風土、文化ができてくるのかなと考えています。

社長として常々「こういうことが大事なんだよ」と伝えていらっしゃるですか?

お店に臨店したり、各セクションの会議に参加したり、メールやブログで伝えていっていますが、まだまだすべてのメンバーにまで完全に伝わっているかというと、伝わってないところも正直ありますね。

コミュニケーションは労力と時間がかかって大変ですよね。言っている立場と聞いている立場は違いますし。次に、教育について伺いたいのですが、正社員で人材を採用する場合、現場スタッフの次のポジションは店長という仕事ですよね。店長の仕事は大変じゃないかなと思います。店長の仕事がきちんとできる人材と言うのは、実は少ないのではと思うのですが、経験である程度学べるものなのか、生まれつき持っているセンスでするものなのか、店長の仕事はどのように教えていくのでしょうか?

経験を通じてできることも当然あるとは思いますが、やはり知識やスキルは自分で学習して身につけていかなければ身につかないことも沢山あるのかなと思っています。ただ、「想いは手法の上流にあり」という言葉もあるように、店長、リーダーとして一番大切なのはやはり想いだと思います。
店長であれば、どんなお店にしていきたいのか、どんな仲間と働いていきたいのか、どういう喜びをお客様に提供していきたいのか、そういった熱い想いをリーダーとして持てるか、が最も重要な要素だと思っています。スキルの部分だけなら、当然店長も完璧ではないので、経験の長いアルバイトさんの方がレベルが高いケースもあります。
ただ最終的には、店長がアルバイトさん達をしっかりまとめ、強いチームを作れるかどうかです。そのためには、「自分がどうしたいのか」という熱い想いがないと強いチームは作れませんので、もちろんマネジメントスキルは最低限考慮に入れますが、一番はリーダーとしての熱い想い、仲間に対する熱い愛情を持てるかどうかを基準にしています。

性格や資質、職業観も大切ですね。熱い店長を探すのも大変ですね。

人によって熱さも違うと思いますが、私や会社が考えている理念や指針などのビジョンを理解してやってもらえる人材であれば、店長としてやっていけるはずです。

どんな時に「会社のビジョンを理解してくれている」と感じるのですか?

半年に一回、キャリア面談という個人面談をしているので、その時にも確認はできますが、それ以外にも月に一度の店長会­­­議や店長会議後の懇親会、さらには社内イベントを通じてコミュニケーションをとる機会はできるだけ作っています。話を聞くと、ビジョンが伝わっている、伝わっていないというのはわかるので、伝わっていないメンバーには繰り返し伝えるようにしています。

コミュニケーションはよくとる方ですか?

そうですね。好きです。店舗数が増えてきているので全てを見ることはできませんが、やはり「お客様は貴重な時間とお金を使って、数多くある飲食店の中から当店を選んでいただいたからには、満足以上の感動を持って帰っていただきたい。」という想いが強いので、その想いが共有できないのであれば、やたらに店舗を増やすこともしたくないと考えています。ですから、そういった想いを持ったメンバーと一軒ずつ着実にお店を作っていきたいと思います。
実は最初の数店舗までは自分が率先していたのですが、家業から企業への脱皮過程で、ある役割のなかで仕事をするようにしました。ですから、自分ができる事といえばコミュニケーションしかないと思い至ったのです。

現在の店長クラスの方々とコミュニケーションを図っていて、何年先までのビジョンまで見えていますか?

当社は、「感動創造」と「社員の夢を実現」という理念を掲げていますので、社員が将来描いている夢や目標を一年でも一日でも早く形にさせてあげられる環境を作っていきたいと常日頃考えています。そのためには事業基盤を大きくする必要があり、マイルストーンとして2015年に30店舗30億体制を作ろうという明確な目標があります。
社員がやりたい事をやれる環境をいち早く作っていくための手段として店舗数を増やし、人材を増やし、目標達成を果たしたいなと考えています。ですから、現時点では30店舗まではイメージできています。

「社員の夢を実現」についてもう少し伺いたいのですが、どのように社員の夢を聞いていたり、会社の事業計画から社員が夢を持つのかなど聞かせてください。

さきほども申し上げたのですが、弊社では半年に一度キャリア面談を実施しており、そこで一人ひとりの話を聞いています。社員の夢を聞かないと一方通行になってしまいますし、夢の実現には繋がらないと考えているためです。また、私が彼らの夢を把握する事も大事ですが、社員同士がそれぞれの夢を共有する事も大事にしています。ひとりで叶う夢もあるかもしれませんが、メンバー間で夢を共有することで、仲間の夢を応援したり支え合う環境が生まれます。
社員の中でも、将来お店を持ちたいという夢だけでなく、会社の幹部や役員になりたいとか、社内ベンチャーやのれん分けで起業したいという夢をもつ社員もいます。ですから、あくまでも30店舗や30億というのは、社員がいろいろな事をやりたいという可能性を投資の部分も含めてRYコーポレーションとしてサポートできる体制を作っていこうということなのです。
ただし、RYコーポレーションを支えてくださる方々もたくさんいらっしゃるので、年々緩やかでも成長していく事が大事だと思っています。そういう想いで今日まで、社員とコミュニケーションをとりながら、事業計画と個人の夢をできるだけリンクさせながら事業運営をしてきています。

今のお話を聞くと、事業計画と個人の夢は一緒に行けそうにも思うのですが。

なかなかうまくいかないですね。やはり独立や起業はいろいろなやり方があると思うのですが、正直楽ではありません。逆に、楽をして起業させてはダメだなとも思っています。ある程度会社に貢献してもらうこともそうですし、一緒に働いている仲間に認めてもらうことも必要です。ですから現在は、これらを前提にいくつかの試練を乗り越えて初めて一本立ちできるような仕組み、コースを考えてチャレンジしてもらっています。
これはだいたい3年~5年で独立できるシナリオを描いていて、それをするために、いま何ができて、何ができないのかをしっかりヒアリングしていますが、あっという間に半年、一年が過ぎて、一年前と同じ事をしている…、そういう社員もまだまだ多いのが実情です。