経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.048 テラモーターズ株式会社(徳重徹氏)

メガベンチャーとして前例を作るのが役割 テラモーターズ株式会社(徳重徹氏)

ピンの立った人材は日本のベンチャー企業や中小企業には当てはまらない


起業家表彰制度アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー・
ジャパン日本代表候補に選出される(2011)

徳重:
私はそれまで大企業でしか働いたことがなかったのですが、初めてそこでベンチャー企業のリアルな大変さや面白いところ、日本のベンチャー企業とシリコンバレーのベンチャー企業の違いに気づきました。そういう環境で5年ほど働き、失敗事例もたくさん見ましたし、ノウハウも蓄積できました。当時はあまり日本ではベンチャー企業の情報はなかったので、30代前半の私に経産省が「どうしたらシリコンバレーみたいなのが作れるのか」と聞きに来たこともありました。そこでいろいろと調べてみたのですが、シリコンバレーにはヒューレットパッカードのように20年30年かけて大きくなり、国に大きな影響を与えている企業がたくさん出てきている。それを知り、ベンチャー企業は社会にとっても大切なものなのではないか、と考えるようになりました。しかしそのいっぽうで私の経験上、日本ではベンチャー企業の立ち上げに反対する風潮も根強い。それは本当に変えていきたいな、と思いました。そのためには国家戦略よりも何よりも、成功事例が出ないとだめだというのが私の考えです。日本とシリコンバレーを比べると、日本にはプロのアントレプレナーが圧倒的に少ないんです。私はそういう血も継ぎ、シリコンバレーでの経験で考え方も変わっている。だからこそ私にできる部分があり、私が変えていかないといけないだろう、と思い至ったのです。

樋口:
過去の記事を拝見していて、会社作りは最初の10人が大事だ、という記述がありました。このようなお考えに至ったのは何かきっかけがあるのでしょうか。

日本の場合、ベンチャー企業や中小企業は社長だけが偉いんですよ。それではやはり組織が大きくなりませんし、スピード感も当然持てません。だからうまくいかないんです。いっぽうでシリコンバレーのベンチャー企業を見ていますと皆が最初からプロなんです。例えばCEO (最高経営責任者)、COO (最高執行責任者)、CFO (最高財務責任者) 、CTO(最高技術責任者)はそれぞれが各業界の有名どころの出身で、実績もあるといった具合です。それは成功確率が上がりますよね。当たり前の話です。これと社長だけすごい日本の会社を比べると、それこそ最新鋭の機械と竹やりみたいなものです。

シリコンバレーでの経験から学ばれたのですね。

そうですね。ただし、そういうはいっても、日本でも同じように優秀な人材を集められるかと言えば、それはとてもハードルが高いわけです。理屈自体がわかっていても、私も最初からそれができていたわけではありませんでした。大手の人材紹介会社に紹介をお願いすると、レジュメをもらった段階でお金が出て行ってしまいます。他方ハローワークだと希望する人材と合致しない。ある時、どうしようかなぁと思いながら名刺をペラペラめくっていたら、優秀な大学生をベンチャー企業に紹介するビジネスをしている「スローガン」という人材紹介会社の名前が目に留まったので会ってみたんです。そこで初めから海外でやりたいということと電気自動車のイノベーションが間違いなく起こるであろうこと、世界は変わっているけれども日本だけ変わっていないということなど私が日頃から考えていることを伝えました。そうすると、すぐに彼が共感してくれて2人紹介してくれました。紹介してもらった1人は早稲田大学の4年生で、もう一人も26歳くらいでしたが優秀な人材でした。それで当社の事業とこれからの市場、日本の状況についての話をしたらすぐに入社してくれたわけです。
今は学生全体に占める優秀な人の割合が変わっています。昔は90%が保守的で10%が意識の高い層でしたが、今は95%が保守層で5%が意識が高い人たちです。意識が高い層の割合は減っているんですが、この5%のピークは昔よりも高いように思います。私たちよりももっとアグレッシブで、もっと突っ込んできて、もっと今の状況をおかしいと思っているんですよ。彼らは意識が高く、英語もできるし、勉強もしている反面、泥臭い仕事もできる。ですからITでアプリを作るよりも新興国でグローバルにやりたいと思っている人もいるわけです。しかし、そういう人は日本のベンチャー企業や中小企業には当てはまらないんですよ。