経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.050 特定非営利活動法人Teach For Japan(松田悠介氏)

心がけているのは、組織の1人1人が学び続ける組織作り 特定非営利活動法人Teach For Japan(松田悠介氏)

本気で物事を進めるためには人の見極めが必要

樋口:
今適切なアサインのお話が出ましたが、私はベンチャー組織の成功の鍵は、最初のトップ2人が握っていると思うのですが、松田さんもやはりこの2番目となる人材にはこだわっていらっしゃいますか?

松田:
そうですね。実は私はそれで1回失敗を経験しているんです。留学から帰国後、日本で活動を始めるにあたって、ブログを通じて情報発信をしていました。当初は、それを読んで集まってくださった方々全員で準備会を立ち上げ、毎週のミーティングを通じてプログラムを設計していきました。こうしているうちに徐々に組織のスピード感が増してきて、事務局長の立場が必要になったので、当時のメンバーの中で一番動ける学生に代表を任せることにしたのです。ところが、想いの相違や得意な仕事が私と重なっていたことが原因で、なかなかうまくいきませんでした。結果、2ヶ月と持たず、最終的に解散を決定しました。自分自身、その解散は苦渋の決断でしたし、できれば最初に集まってくれた仲間たちと一緒にこのモデルを日本で作っていければなあと思っていました。ですが、そのままだと前へ進むべきものも進まなくなってしまうと思ったのです。
2回目の立ち上げ時の事務局長とは組織を立ち上げようとする段階で出会いました。彼とは勉強会で何度か一緒になることがあり、コーヒーを飲みながら教育観や理念を一緒に語ったこともありました。彼はもともとプロボノメンバーとして当団体に携わってくれたので、働き方も近くで見ることができました。そういったことを通じて彼と一緒に働くことに対して自分が心地よさを感じることができたため、一緒にやり始めたのです。
今の事務局長の阿久津(阿久津純一氏)も組織に入る前からよく知っていました。彼はもともと前職の先輩で、教育に対しても熱い思いを持っていました。彼は細かい所まで見て、1つ1つ丁寧におこなうのが得意なのですが、実は私自身はそういうことがあまり得意ではないんです。もちろん失敗から学んで不得意部分を克服することも一つはありだとは思います。しかし、まず自分の強みで秀でる、それに伴って他の苦手な部分まで総じて上がっていけばよいと私自身は考えています。ですから、自分の劣っているところ、足りないところは逆にそこに尖っている人を集めて仲間になってもらうのが組織のスタートアップにとっては自然だと思っています。 この二人に共通しているのは、Teach For Japanのビジョンに共感しているという点です。課題に対する原体験や物語を持っていて、これを達成することが、自分自身のビジョンを実現することにも直結しているんです。だからこそ、どれだけ仕事が大変であっても、どんなに激務であっても、続けられるのだろうし、一緒にやっていけると思うんです。
こういった人たちが集まってくれたのは、自分自身がビジョンを表に出してきたからだと思うんです。こういった素敵な人と1人でも多く出会うためにも、私は表に出てどんどん発信をして、同じ想いの人たちを巻き込んでいくしかない、巻き込んでいくべきなんだなと感じています。

ロケットスタートが切れるかどうかが共に働く仲間にかかっているというのは、企業もNPOも一緒なんでしょうね。関連して伺いたいのですが、メンバー以外に組織のスタートで大事だとお考えのことは何でしょうか。

まず一つは、集まってくる仲間たちを見極めることです。これはおそらく企業ではどこでもやっています。われわれには実際に進めなくてはならないものがたくさんありますし、本気で取り組み、物事を進めていかなくてはなりませんから仲間の見極めは重要なポイントなのです。
具体的には、最初から求められる要件を明確にしておくことです。各ポジションについて、想定される業務や求められるスキル、経験を設定していること、さらに1回の面接で終わらせず、3次、4次面接など複数回おこないます。また、途中で業務に関連する課題を出し、1週間ほどで提出していただく、ということを実践しています。もう一つは、スタートアップに求めている人材には、業務に見合った報酬をお支払いしたいと思っています。今までであれば、NPOの職員は生活の面で苦労することが多かったと思うのですが、貢献している価値に応じた報酬を提供できるように、NPOの形を作っていきたいなと考えています。

面白いですね。採用法のお話はコンサルタントの採用の手法に似ているような気がしますね。

これは実は、25カ国あるTeach For Allのネットワークに入る強みです。採用や組織作りのノウハウを共有してもらえるんですよ。もちろん、アメリカでうまくいったからといって、日本でうまくいくとは限りませんが、1つの参考にはなると思っています。加えて、前職は人事コンサルティングの仕事をしていたので、その経験も生きています。 面接で想いが合ったからといって採用してしまうと、お互い不幸せになってしまう可能性もありますから、そういったミスマッチはなるべく防ぎたいですね。