経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.057 株式会社カオナビ(柳橋 仁機氏)

シンプルで直感的なサービスを通じ、変化し続ける人事・経営を支えたい 株式会社カオナビ 代表取締役(柳橋 仁機氏)

「人材管理マネジメント」という新しい領域で注目を集めている、「カオナビ」。非常にシンプルなシステムながら、中小企業・サイバーエージェントなどの大手顧客も続々と増え続ける株式会社カオナビ 代表取締役 柳橋 仁機 様に、開発のコンセプトにもなった経営への考え方やこれからの人事についてお話を伺いました。

コンセプトこそが、最大の差別化要因

樋口:
まず、「カオナビ」という商品を作ろうと思ったきっかけについて伺えますか。

柳橋:
サイバーエージェント様より顔写真と名前を並べられる仕組みを持ったデータベースが欲しいとの依頼を受けたことが始まりです。その際、この仕組みが人材マネジメントに有効だと伺い、私自身興味を持ち商品化しました。

私自身、経営者として100名を超えたくらいから全体を見渡せなくなった経験がありました。こうした中小企業のニーズが、やはり増えていますか?

そうですね。ロビン・ダンバー教授(注1)によれば、人間が顔や名前を記憶できるのは150人が限界だそうですが、実際従業員100名前後の企業からのお問合せは多いです。業界としては規模拡大中のIT業界や店舗型の小売・外食からの引き合いが多いですね。その他、海外展開を志すメーカーが社内の優秀人材の顔写真を並べて、グローバル人材の選抜に使うケースも増えています。

少し失礼な質問になりますが、今後同じ機能を有した競合が出てくる可能性はありそうですか。


無くはないと思いますが、あまり気にはしていません。
その理由は、徹底的にこだわったコンセプトを打ち出していることです。「タレントマネジメントシステム」の領域でコンペになることはありますが、その際、私たちは出来るだけ比較されぬよう顔と名前を並べることが大事だ、というシンプルなコンセプトを前面に押し出すようにしています。
いろいろな意見はあると思うのですが、私は「技術・機能」は真似されやすいものだと思っています。ソフトウェアはコードをコピーすることが出来ますし、そもそもオープンソースをベースに開発を行っているので。だからこそ、そうではない部分、例えば創業のきっかけとなるコンセプトや製品を市場のニーズに合わせていくスピードこそが、他社に真似できない高い価値を有しているのだと思っています。



シンプルに、必要なことだけをやる

樋口:
共に働く社員の皆様にはどのようなお話しをされるのでしょうか。


「シンプルに、必要なことだけをやる」ということですね。
ITの世界は今、多機能だけれども初めての人は何から行うべきか分からないというツールが多く、複雑化しすぎていると感じています。だからこそ、シンプルに必要なことだけを実現し、お客様を複雑さから解放したいと思っています。

コンセプトや考え方を大事にされるというのは、営業の場面でも同じなのですか。

同じですね。加えて、体感してこそ良さが分かるものなので、必ずデモ画面をお見せしています。顔が並び、それをピッとクリックするだけで社員情報が分かるという感覚をお伝えするわけです。結果、ITシステムながら技術的な説明はほぼせず、擬態語・擬音語を用いた説明になりますね。
コンセプトが明確な分、お客様によってウケるときとウケないときの差は激しいです。(笑)

明確なターゲット設定があり、そのニーズを満たすためにサービスや営業を特化されているのですね。

はい。大ヒットしたiPhoneですら日本での市場占有率は約6割程度ですし、全てのニーズを満たすことは出来ないと思っています。一部のニーズに深く応えられるよう製品を開発し、営業トークを研ぎ澄ましていますね。




※1:ロビン・ダンバー教授…イギリスの人類学者。人間が真正の社会関係を営むことができる最大の個人数が150迄という仮説を提唱。