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明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科 教授 (野田 稔 氏)

鍛えられた学生を本質的に見極める方法とは

樋口:
 事業創造人材=青黒い人材=「工字型」のキャリアに適する人材の定義化は難しいということでしたが、例えば採用の段階ではどのような基準で見抜くべきなのでしょうか。

野田:
 非常に難しい問題ですね。恐らく、すなおでしなやかな人材であること、過度な利己主義でない、人やチームのために働ける人材であることが重要だと思うのですが、最近の学生は皆面接で上手にうそをつきますからね。学生が就活マニュアルで鍛えられた今、表面的なコンピテンシー面接には限界が来ていると思います。深堀り質問も想定済みで、殆ど見抜けません。
 その中で、大学の成績がその学生を見抜く重要なエビデンスがあることに気がつきました。結果はもちろんですが、どの科目を選択したか、も含めてです。厳しいトレーニングと試験を乗り越え、教員から評価を受けたのであれば、それを認めるべきだと。全ての科目を確認する必要はなく、履修生の1/3が「不可」をつけられるような厳しい科目だけを確認すれば十分でしょう。私が理事を務めるDSS(NPO法人大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会)の「大学成績センター」が提唱する“履修履歴面接”は、それを体現する考え方です。
 実際に発揮された学ぶ力、解決する力を見る必要があるということです。

 まさに、私たちも同じように感じており、新卒採用の最終選考として2日間の合宿にてケーススタディを実施してきました。

 大変優れた手法ですね。私も、あるべき選考の形を模索しているところです。まず、近年注目されているインターンシップですが、今後これは採用に使ってはいけないことになりましたし、日本のケースではうまく機能しないのではないかと考えます。なぜならば、採用をするのは人事であり、現場がインターンシップを受け入れる場合は学生の様子を人事が把握できず、人事がインターンシップを受け入れる場合は現場が求める本質的なリアルな力を見極めることができないためです。
 そこで、先日実施したのは、理系女子学生を集めた合同企業ワークショップです。3時間という短時間で、企業が提示した課題を、採用する企業側のスタッフとともに学生がディスカッションするものです。具体的には、まずグループに分かれ、各グループに各企業の人事担当者が一名つき、一セッション12分程度で企業が提示した課題についてアイデアを出し、グルーピングを行い、最後に人事がフィードバックをおこないます。時間のプレッシャーがある中、企業は学生の、学生は企業人事の能力を見極められ、それが強い入社動機にも繋がるのです。
 ポイントは短時間で知的ストレスが掛かった状態だからこそ、お互いがはっきり分かるという点ですね。それを超えた人事・学生同士のモチベーションは凄く高まります。

 なるほど。所謂就職ナビの影響力が低下している今、こうした個別の出会いは重要になりそうですね。合宿という形式よりも短期間で、クライアント企業にも提案しやすい形式だと思いました。
 本日は、ありがとうございました。

 

 

 

CompanyData

■氏名:野田 稔 ■所属:明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科 ■職位:教授