経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.064 株式会社USEN 常務執行役員(服部 浩久氏)|経営者人事対談|

自身の起業経験を活かしたチーム編成とマネジメントとは  株式会社USEN 常務執行役員(服部 浩久氏)

35歳で経験した、経営の譲渡

樋口: 【起業した会社を譲った経験について】
なるほど、徐々にUSENに深く入っていかれたということですね。ご自身の会社はどうなりましたか。副社長に社長を任せても良いと思ったきっかけなど、あれば教えてください。

服部: 1年3ヶ月の間、代行をしてもらった副社長に「社長になりたいか」と聞いてみたら「なりたい」と言ったんですね。社員も彼に定着してきていましたし、「だったらやれば?」と、そこから株を全て譲渡しました。「社長という立場は譲ったけど株式を持っている」というようでは意味がなく、本当に譲ることとはそういうことだと思いますね。周りの経営者たちからは「お前は甘いね、持っときゃいいのに。」と言われましたが。社長をやらせたことについては、本人に尋ねて返ってきた返事が唯一の決め手で、スキルではなく気持ちです。会社のトップとは一番情熱を持っていなければいけないと思っています。社長はつらいし大変なことしかないので基本的におすすめしていません。やりたい気持ちと、ついて来るメンバーがいれば、スキルはなくとも組織は機能すると思っています。

花形の工学部機械科から、まさかの文系就職

樋口: 【どのような就職活動をしていたのか】
株を全て譲渡されたとは、すごいエピソードですね。ところで新卒で入社されたのは、人材会社である株式会社インテリジェンス(以下、インテリジェンス)だったとお聞きしました。当時、どのような就職活動を経て入社をされたのか、教えてください。

服部: 私は京都大学の工学部で物理工学を研究していて、当時は理系工学部の中でも花形の、いわゆる航空・建築・電気・機械の4つの中で機械にあたる部門でした。当時は、大手自動車メーカー・大手重工業・大手製鉄会社等に就職した大学OBが優秀な学生を見つけるため、青田買いのような状況もありました。しかし、周りの人間がそういう流れに身をまかせているのを見ているうちに「あれ?就職活動ってこんなのでいいんだっけ?」と思い、自分で能動的に就職活動しなきゃと思い立ったんです。でもその時は就活を始めるにはすでに遅く、1年留年して。企業研究をしていくうちに、自分は理系ではなく商売人、いわゆる文系就職をしたいと思って、商社、コンサル、広告、メーカーといった業種を受けました。内定もかなりの数をいただいたんですが、最終的にとある総合商社とインテリジェンスで迷いました。

頭で決めるな、心で決めろ。

樋口: 【最後に悩んだ2つの内定先から新卒入社を決めた理由】
直感で決めたようにも聞こえますが、実際はどのように決めたのでしょうか。

服部: 実はインテリジェンスに内定を頂いてから、一度辞退をして商社の内定を受諾しようとしたんです。それぞれの人事の方が何度も説得してくださいました。その中で、インテリジェンスの社長や役員の言葉にはいつも重みがあるし光って見えて、こういう組織で働きたいなと思いました。「条件で決めているうちは決まらない、頭で決めるな、心で決めろ。」と自分に問いかけて、インテリジェンスに決めたんです。これは今の学生にも自分の経験としてアドバイスしています。商社の方からは「ようやく決めたみたいだね」と言われ、その後は一切引きとめられませんでした。「人事のプロは、学生の迷っている気持ちまでわかるんだ」と思ったと同時に、自分でも本当に決められたんだなと思いましたね。頭の中のエクセルで〇×をつけても決まらなかったので、3日3晩悩んで、最後の最後に行きたいと思えた方を選びました。ただ実際は何をやっている会社なのか、人事と人材派遣の違いもわかっていませんでした。わかっていなかったからこそ、事業内容について思い違いをすることもなかったです。もしかしたら、好きだと思える会社であれば、事業内容なんてまったく知らなくても良いのかもしれないですね。