経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.064 株式会社USEN 常務執行役員(服部 浩久氏)|経営者人事対談

自身の起業経験を活かしたチーム編成とマネジメントとは  株式会社USEN 常務執行役員(服部 浩久氏)

新規事業を任せられる3つの要素

樋口:【新規事業を牽引するのに必要なリーダーシップとは】
規模や事業にもよるとは思いますが、これまでのご経験から、どんな方なら新しい事業のリーダーを任せられると思いますか?本人が「やりたい」と言ったときに任せられる方がどんな人物なのかについて、お聞かせいただけますでしょうか。

服部: ポジションにもよりますが、事業部長の場合、任せるにあたって明確に3つの要素を決めています。定性的に聞こえるかもしれまんが、「事業への情熱」と「折れない心」、そして「最後までやり遂げる意志」です。これを持っていれば任せるようにしています。たとえばUSENでは「START UP」という新規事業企画募集の制度があり、直近では150件を超えるプロジェクト応募がありました。役員にプレゼンし、予算をとって事業を始めてもらうのですが、いま2組が実際に立ち上げています。最終選考の合格基準は2組とも「プロジェクトリーダー本人が自分でやりたいと思ったかどうか」で、「自分でなくても誰かがやればうまくいくと思います」といったような回答をしたものは落としました。自分でやりたいと強烈な気持ちを持っていたプロジェクトを事業化しましたね。もちろん彼らにスキルがあるかどうかも見ますが、やった者勝ちだと思っています。チームを率いるのであれば自分がいちばん情熱をもっている、自分が最後まであきらめない、というパッションをもっているべきだと思っています。

マネージャーも時代の変化に合わせて

樋口: 【次世代を担うリーダーシップについて】
ラグビーの選手には、ビジネスの世界でも活躍していただきたいですね。良い選手たちが自信を持って社会に出ていけるように、何か橋渡しができれば嬉しいと思私はもうすぐ60なので、高度成長期に組織人として育てられました。自分のモチベーションを組織の中でうまく活用していただいたと思っています。私のように会社を辞める人間は少なくて、定年まで会社と一緒に頑張るという人間が多かったように思います。そんな中、私はいま次世代を担うリーダーシップについて3つのタイプがいるという仮説を持っています。1つ目は【自立型】で、自分の未来を会社にあずけないタイプ。2つ目は【成長型】で、なんのための仕事か、意義にこだわるタイプ。3つ目は【創造型】で、社会の役に立つ何かをつくりたいという情熱を持ったタイプ。これらの仮説について、何かご意見をいただけませんか?

服部: リーダーシップ、難しいテーマですよね。私も先ほどお話しした3つを決めているとは言うものの、じゃあそれを満たす人間がうまくいく、という必要十分条件とは言えないですし。やはり「思い」の部分が一番なのかなと思っていて、スキルの因数分解は極めて難しいと思っています。トップがメンバーをモチベートさせて、専門性をもった人間が動いてくれれば、チームは成果を発揮すると思っている部分がありますね。そこにリーダーがいるかいないかで、チームの士気があがるというタイプっているじゃないですか。彼がいるだけでうまくいくような気がする、とか、とにかく花園に行こうよ、と言い続けるとか。成長しているベンチャーの社長の方々はそういう方が多いですね。若い方でも意外といますよ。年齢層はあまり関係ないのかもしれないと思っています。例えば、今の若者はゆとり教育世代と言われていますが、社会を変えたいと思っている人間はいますし。情報収集をする方法を見ても、これまでは情報を取るのにTELアポしていたのが、20代ではまずネットで調べますよね。それはビジネスへの取り組み方が変わっただけで、意識の高さの違いではなく、手段の違いであると思っています。

ここから見る、学生の最終面接

樋口:【学生の選考基準とは】
さて、学生の最終面接も多く対応されているとのことですが、「ぜひ一緒に働きたい、採用したい人」と、ぎりぎりだけど採らざるを得ない人のボーダーラインなどをお聞かせいただけますでしょうか。

服部: 学生の方に選考基準を聞かれると濁すことも多いんですが、「当社がほしい人材」という見方はしていません。学生目線で当社にマッチしそうか、つまり彼・彼女が当社に来てくれたときに幸せそうな姿が見えるかという判断軸を持っていますね。彼らが「この会社、合うな」と思ってくれれば活躍してくれると思っています。30分の面接がそれを確認する作業だとすると、5分で終わる方には残り25分で口説きますし、見極めに30分かかる方もいます。相手がこれまでやってきたことや生き方が、当社にマッチしそうかという見方をするケースが多いです。学生にスキルや経験は求めていませんし、入社してから勉強すればいいと思っています。面接は過去を調べることと未来を共有することであって、志望動機など、いかようにでも作成できるものは聞いても仕方ないですよね。でもこれまで21年の生き方は変えられないので、学生時代のエピソードを探っていくと、この子はこういう時にこういう考え方・行動をするんだというのが見えてきます。未来にどうなりたいのか、今の延長線上なのか、大きくレバレッジをかけようとする意思があるのかも想像がつきますね。また、あの部署やあのマネージャーの下だとうまくいきそうだなとイメージできるケースも最近では結構多いです。ベンチャーの社長をやっている頃は私と合うかどうかだけだったんですが、今は2千数百名の社員がいますので。「達成欲求の高さ」と「モラトリアム傾向の低さ」はブレないので、特に見ますね。あとは物欲でもなんでもいいんですが、欲求が高いと成長しようという意志につながりますから。

マネージャーの役割は、部下をわくわくさせること

樋口: 素晴らしい採用方針ですね。だいたいは「我が社に合うか」という目線で考えてしまいがちですよね。それを、相手を主語にして「どこなら活きるか」というのはなかなかできることではありません。

服部: いえ、合理的なだけかもしれません。当社では新卒を年間150名ほど採用しますので、会社から見ると150分の1です。しかし学生から見ると1分の1なので、そっちに主眼をおいて置いた方が間違わないのではないかと思っています。数字からそう思っているだけかもしれませんが。入社したら辞めないという時代ではなくなっているので、マネジメントのスタイルが変わってきているなと感じますね。彼ら、彼女らがわくわくする仕事をいかにつくれるか、というのがマネージャーの仕事になってきていると思います。よその方がわくわくすると言われたら、上の力不足ですね。お金なのかキャリアなのか達成感なのか、それをつくるのが会社であり組織であると思います。そういうことを上が意識できないと、配下のメンバーはかわいそうだと思います。ですので私は、一つの目指すべき目標として、花園や甲子園の力を借りるわけですね。USENにとっての甲子園をつくるのは経営者の役割で、マネージャー達がみんなそれを口にし、メンバーとともにそこを目指せると、もっと組織が強くなるのかなと思います。

【おわりに】
樋口:「わくわく」という言葉は、会社から見るとバカみたいな言葉ですが、一人ひとりを尊重するからこそ出てくる言葉なんですよね。私の時代は会社が大きい存在でしたが、会社に依存しない今の時代に経営者として社員を従属と見ずにどう付き合っていくか、非常に考えさせられました。学生の採用基準における「レバレッジ」という言葉の使い方もそうですが、服部さんのお話が一貫して内容が濃くておもしろいなと思うのは、お話がご経験から来ているのだなというところですよね。サラリーマンっぽくないというか、私も学ばなければいけないなと強く思いました。本日はどうもありがとうございました。
(取材:2017年1月19日)

 

CompanyData

株式会社USEN

■代表者: 代表取締役社長 田村公正氏
■URL:http://www.usen.com
■事業内容 :日本最大のシェアを誇る音楽配信事業を中心に、業務用システム事業、ICT事業などを展開。
・音楽配信事業:世界最大規模の音楽配信サービス。業務用BGM、個人用音楽配信サービス(スマホでUSEN)等
・業務用システム事業:ホテル・病院・ゴルフ場などの業務管理システムおよび自動精算機の開発・製造・販売
・ICT事業:インターネット接続サービスを中心に、データセンター、クラウドサービス等を提供
・その他集客支援事業や新規事業開発(集客支援サービス、店舗運用サービス、電力事業、歯科支援サービス等)