経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.002 セールスフォース・ドットコム(鈴木 繁 氏)

セールスフォース・ドットコム 鈴木 繁 氏

CRM(顧客管理)システムとクラウドコンピューティングのリーディングカンパニー、セールスフォース・ドットコム。設立以来驚異的な急成長を続ける同社の企業文化やEmploy Successを標榜する人事部の役割について語っていただきました。

樋口:
御社は2000年の創業以来、異色の急成長中ということで、こうした中での人事の秘策というと漠然としてしまうかもしれませんが、ご自身の立場から、人事戦略、またポリシーと言ったらいいのでしょうか。そのあたりから伺ってもよろしいでしょうか。

鈴木:
現在、ワールドワイドでの社員数は約3,000名強。そのうち、日本は約200名です。1年半前の時点では100名いませんでした。現在はその倍とかなり急成長していますので、人を採用することにかなり力をいれてきました。一方で、良い人材の採用というのは、社内の人事制度等が魅力的でないとなかなかうまくいきませんので、制度の見直し・改善を行っています。一例として、401Kを今年から導入します。

なるほど

2月から新しい事業年度が始まったのですが、今年はさらに内部固めをしていくステージだと考えています。組織規模の変化に応じて組織運営上の課題は刻々と変化していきますので、向こう5年間こういう戦略で行くぞと打ち出すより、組織の規模に合わせて柔軟に変えていくべきと考えています。一つ例をあげると、少しずつ個人プレーから組織的なオペレーションにシフトしていく必要性を感じています。それには、いろいろな方法論がありますが、まずは核となるマネージャーのトレーニング、これに力を入れていこうと考えています。

御社の仕事内容や社風といったところから、どういう人がフィットするのでしょうか。

わたしどもが今求めている人材というのは、いろいろな条件がありますが、他社と比べて違うところは、わたしどものビジネスモデルがどういうもので、それがマーケットにどうインパクトを持つかということを十分に理解している人です。

といいますと。

もう少し具体的に言いますと、最近、クラウド・コンピューティングという言葉がかなり聞かれるようになりましたが、アメリカではこうしたクラウド・コンピューティングの流れの中で、ビジネスとしての成長性が高いと言われている企業として、グーグル、アマゾンドットコム、そしてわたしどもの名前が挙げられることが多いようです。このような企業の中でわたしどものビジネスモデルの一つの特徴は企業を対象としたサービスに100パーセント特化している点だと思います。このことの持つ意味を理解し、わたしどもがどのようなことを社会に提言、提案していて、どのようなビジネスをやろうとしているかという方向性を理解し、一緒にやっていきたいと考えている人材に来てほしいと考えています。

クラウド・コンピューティングというはIT業界の人であれば、わりと理解し得るような内容なのでしょうか。

その言葉自体は、以前から提唱していた人たちはいましたが、一般的に耳に入ってくるようになったのは、ごく最近ですね。簡単に言いますと、いわゆる従来型のコンピューターシステムの場合、特に日本の場合はユーザーはシステムを自前で持ちたがる傾向があります。顧客情報や製品の開発情報などを外部に置きたくないという考え方が基本的にあります。従って、ハードウエアを購入し、その上にシステムを組み上げていく自社開発か、あるいはパッケージ化されたシステムを購入し、それをカスタマイズして使うというユーザーがほとんどです。IT業界は非常に先進的なものというイメージがありますが、ビジネスモデルという視点では、ある意味で他の産業に比べて非常に古い部分があります。例えば、ITではなくて自動車で例えると、ユーザーはすべて自動車メーカーに発注して購入するというパターンがほとんどで、レンタカーという形態もあまり浸透していないような感じです。ましてや自前で車を買ったり借りたりせず、タクシーとか、バスのような、走っているものを利用して移動するというビジネスモデルが、今までのコンピューターの世界にはありませんでした。運賃を支払えば済むところを特注の車を購入しなければならないといった思い込みがあったように思います。

なるほど。

わたしどもが提唱しているのは、わたしどもが持っているデータセンターに、お客さまがWEBサイトからアクセスし、わたしどものソフトウエア・サービスの機能を使っていただくものです。これを実現するためには、セキュリティや拡張性など高度な技術的な課題を克服する必要がありましたが、これはわたしどもの問題であり、お客様の問題ではありません。お客様はシステムを構築する必要も、メンテナンス作業も必要なく、必要なサービスだけを利用すればよいわけです。