経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.002 セールスフォース・ドットコム(鈴木 繁 氏)

セールスフォース・ドットコム 鈴木 繁 氏

樋口:
ピープル・マネジメントについて、もう少しお話を伺いたいのですが、現段階では将来を見据えたとき、どんな問題が起りそうだとか、どんなことがいずれ出そうだなということを想像されていますか。

鈴木:
これはわたしどもの会社が特にそうだということではないと思いますが、ストレスマネジメントとか、あるいはメンタルヘルスがますます重要になっていくと思います。おそらくIT業界全般、あるいは、ほかの業界でも共通した課題だと思います。わたしどもでは現在、産業医の先生に来ていただいて、社員やマネージャー向けにセミナーを開催しています。どういうことに気をつけなさい、どういう対応をしなさいということを社員自身やマネージャーに理解してもらうようにしています。こうしたことが発生すると、会社もそうですが社員自身も大変だと思います。予防することが一番だと考えています。マネージャーがピープル・マネジメントの一環として、こうした部下のメンタルヘルスにもきちんと気を配ることにより、会社全体として予防する力が上がることを期待しています。因みに、離職率は低いほうだと思います。一般的に非常にスピードの速い会社、外資系でITだということで、離職率が高いというイメージを持たれるのですが、実は低いですし、また、下がる傾向にあります。そういう意味では、全般的にはうまくいっているのではないかと思います。因みに、わたしどもでは人事部の英語の名称は、Human Resourcesではなく Employee Successです。社員の成功を支援し、実現するのが人事部の役割という考えの表れです。これもわたしどもの企業文化の一つの例と言えるかもしれません。

御社では、いわゆる社員満足度調査であるとか、何か定期的なものはやっておられますか。

1年に一度、エンプロイ・サーベイという社員意識調査を全社的にやっています。その結果のサマリーを社員には発表しています。先ほど申し上げた401Kの導入も、このサーベイの結果を反映したものです。今の話に少し絡んでくるものとして、アメリカのフォーチュン誌が「働きがいのある会社 ベスト100」を毎年発表していますが、今年はこれにランクインしました。

ベスト・カンパニーズ・トゥ・ワークのフォーチュンですね。御社は今年、55位にランキングされていますね。アメリカでベスト100に選ばれるというのは、本物の働きがいのある会社であるといえますよね、素晴らしい。日本でも社会貢献活動に力を入れているということですが。

はい、グローバルに見ても日本の取り組みはかなり進んでいると思います。勤務時間の1%をボランティア活動に充てる取り組みをおこなっていて、年6日の社会貢献活動休暇もあります。私自身もそう思うのですが、こうした活動はとても有意義ですよね。こうした貢献活動が、社員の意識向上にも繋がっていくのだと思います。

いままでのお話を伺っていますと、わりと力のあるセールスが一人一人、ある程度独立していて、最良の中できっといい会社が出来上がり、悩みはありますけど、定着率も高く、いい採用をされていますね。

今はまだ新卒採用をしていないことと関連するかもしれません。わたしとしては社員数300名ぐらいになったら、新卒採用を検討したいと思っています。現時点でも、新卒を採用しようと思えばできると思うのですが、余力を持って新卒を育てていく環境が整っているかを考えると、今はまだもう少し待ったほうがいいかなと思っています。

非常に実直なお答えをいただきまして、ありがとうございます。それにしても、御社のビジネスモデルと、仕事のスタイルはすごく興味深かったです。非常に面白いと言っては失礼ですけれども、御社の非常に大きな特色ですね。

そうですね。何か新しいことをやっている会社だということを理解して応募していただくのが一番いいですね。

一番最初にそのことを理解していないとという意味が、そのお話で繋がったような気がしますね。

そうですね、実際の面接でもその辺を聞かせてもらいます。なぜこの会社を選んだのですかと言ったときに、新しいことをやっている、それに参加したいという考えがあるかどうか。ところが、いわゆる技術的な話やCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)だけの話をされると、多分、クラウド・コンピューティングの本質をあまり理解されていないのかなと思ってしまいます。

要するに、誤解が発生してしまうのですね。従来のIT企業とはあまりにビジネスモデルとモチベーションが違うのだということをちゃんとわからないと駄目だということですね。

ええ。もともとはCRMに特化してスタートしましたが、現在では、プラットフォーム自体を提供しようというビジネスに転換しているわけですからね。

なるほど。変化も激しいわけですね。本日は、どうもありがとうございました。

CompanyData

株式会社セールスフォース・ドットコム

■会社名:株式会社セールスフォース・ドットコム
■代表者:代表取締役社長 宇陀 栄次(米国セールスフォース・ドットコム 上席副社長 兼任)
■創 立:2000年4月
■所在地:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー39F
■URL:http://www.salesforce.com/jp/
■事業内容:
・Software as a Service(SaaS)- 統合型CRMアプリケーション「Salesforce」の提供
・Platform as a Service(PaaS)- SaaSアプリケーションの基盤となるプラットフォーム「Force.com」の提供
・導入支援コンサルティング/トレーニングサービスの提供