経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.003 サイボウズ(山田 理 氏)

サイボウズ 山田 理 氏

スケジュール管理や情報共有がおこなえる「グループウェア」で国内ナンバー1のシェアを誇るサイボウズ。創業から12年、その間に東証一部上場を果たすなど急成長を続ける同社が目指す「21世紀の大企業」への“想い”と“伝承”について語っていただきました。

樋口:
人事の仕事を採用と教育と制度に無理やり分けたとしたら、御社はいま何に一番力を入れておられますか?

山田:
現時点で、という意味では教育です。会社が大きくなっていくというのは、人が会社を大きくしていくことだと私は思っています。よく「自立」と「成長」と「伝承」と表現していますが、従業員が250名いるということは、250の役割があるわけです。各々がもたれあうのではなく、しっかりと自立している。そのためには、250分の1の役割を担える人材が集まってくることが何より大事だと思っています。

すごいことですね。

そうした人材が入社した後に成長し、自分が学び、経験したノウハウを次の世代に伝承していく。こうした連鎖を通じて多くの人が育ち、会社というのは大きくなると思っています。サイボウズも、いままでは自立した人材をいかに多く集めるかということに注力していました。それが一部上場、シェアナンバーワンといった過程を経験しながら、250名規模の会社になり、いまはこの10年間培ってきたノウハウを若い新卒のメンバーにいかにうまく伝承していく仕組みをつくれるかというところが課題かなと思っています。

非常に興味深いお話なのですが、自立はすごく分かりやすく、どの会社でもきっとやっておられると思います。採用だけでいい会社をつくろうとすると、自立型人間を何名採用できるのかで会社の将来が決まってしまうのではないか、大企業ではそもそも無理ではないかなどという話をよくしています。それはさておいて、伝承する内容というか、どういうものが具体的なテーマなのでしょうか?

例えば、今期から「サイボウズ・ユニバーシティー」という伝承の仕組みを立ち上げます。これは、社内のあちらこちらでおこなわれている勉強会をきちんとコンテンツ化して一元管理することで、誰もが受けられるようにしていこうという取り組みです。 あとは管理職への教育でしょうか。1年に2回、1泊2日の合宿形式で直接対話しながらやっています。そのコンテンツは、社長の青野(青野 慶久 代表取締役社長)と私とでつくっていますね。

社長自身は、人にかかわるところに全体の何割ぐらい使われるのですか?

ステージステージによりますが、いままでは5割以上は占めていたのではないでしょうか。青野は二代目の社長なのですが、社長になってから、人で苦労した時期もあって、わりと人に対して使う時間が多くなりました。現在も引き続き人には注力していますけども、ある程度システムというか、カタチが見えてきたということもあって、少しずつ事業のほうにも時間を割きつつあるかなというところですかね。

定着にこだわりをお持ちになっているというのは、ちょっと苦い思いも含めて、人が定着して発展していく会社がいいというのが根底の考えなのですね。

そうですね。

それはなぜでしょうというのもちょっと変な質問になりますけども、好き嫌いの話かもしれませんが、どうしてそういう会社にしたいという想いが強いのでしょうか?

若干哲学的になるかもしれませんが、サイボウズにはサイボウズのDNAがあって、それを自分たち自身でつくり、発展させながらも、“サイボウズらしさ”というものを脈々と受け継いでいきたいという想いがあります。ですので、個々人がそうしたことを経験しながら成長し、伝承するには時間がかかるわけですよね。なので、短期間で人が回っていく(辞めていく)というのは、その人個人にとっては成長する場は与えられるかもしれないですけれども、チームとしてそれを伝承するところまでには行き着かないわけです。私たちはサイボウズを100年、1,000年と続くような企業にしたいと思っていますので、人が長く働けることが 前提になると思っています。