経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.003 サイボウズ(山田 理 氏)

サイボウズ 山田 理 氏

樋口:
よく分かります。マネージャーの人たちへの伝承、そして、そこからの伝承というのが、いまのテーマですね。同じお悩みは多く、例えば、松下幸之助さんの器が1万人の社員だったとしますと、私の器は100人ぐらいかなと思っているのですが、トップの器、会社の器というものが当然あると思います。その中でシステムなのか、人を介した伝承なのか、私自身もまだよく分かっていないのですが、1つの取り組みとして管理職を“自責性社員”にしていくという取り組みを始めています。

山田:
自責性社員?

自責性。他責、評論家ではないと思っていただければ結構です。具体的には、ある職責を持って数字の責任を持つという単純な構造がわかりやすいかもしれませんが、つまり、マネージャーの仕事を突き詰めると、人の問題だ、お金の問題だ、彼を立てればあいつがいじけるといったことに常に悩むわけです。そのときに初めて理念が必要だと思うのです。そうでなければ、ただの好きとか、嫌いみたいな話だけで、理念なんて必要ないと思います。ですので、彼を燃焼させようと思ったときに言い続けるというのも一つの手段だと思いますが、ぎりぎりまで悩ませて、その上で、ふっと耳元で言ってあげると結構入るのではないかなと思ってですね。

なるほど。

幾つかの企業で取り組みを始めて、研修の一番盛り上がって熱いときに、それを出してみてはどうかと考えました。その効果検証はいまおこなっている最中ですが、意外と効きます。やはり同じ立場に置くというのも1つの方法で、それが粋に楽しくできるというのも、伝承の1つのやり方なのかなと思っています。

先ほど松下幸之助さんが1万人で、樋口さんが100人という話がありましたが、弊社の場合は青野が見るのは、本部長だけでいいとよく言っています。実際には、6つの本部があるので、6人だけ見ればいいわけです。よく、みんなをマネジメントしようとして、現場と社長が語り出したりするケースがありますが、自分の真下の本部長とか取締役ときちんと握れているのかというと、そこを飛ばしているケースが結構あったりするわけです。

それは、まずいですよね。でも実際の現場で良く見られる光景です。

本当はそこだけをしっかりと握っていれば、その下は握れている人の下なので問題ないはずです。それこそが組織のレバレッジだと思うのです。「全社員が」とか、「アンケートを取る」と言い出した瞬間に一体感のない組織になってしまうと私は思っています。ですから、5人だったら5人だけをしっかりと握る、というコミュニケーションのラインを徹底する。部長は逆に言ったら、自分の配下のところだけはきちんと責任を持つというようにすると、企業というのはシンプルに回っていくはずです。こうしたラインがたくさんあって、それぞれがその役割を守っていくと、実は1万人の会社でも、先ほど中小企業とおっしゃられましたが、「中小企業」でいけるのではないかなと思っています。

そうかもしれないですね。

弊社のようなベンチャーは、組織の形を成したあとから入ってきたマネジメントメンバーに創業時の気持ちを、直接ケーススタデイーとして伝えることが大事だと思っています。自分たちがこういう場面でこう 悩んで、それでいまの組織があるということですね。ですので、人事制度を説明するときも、最近は過去の人事制度を一通り説明していくようにしています。何もないところからいきなりすごい人事制度をもってきたわけではなく、いちから自分たちの頭で考えてやってきて、失敗を繰り返していまの人事制度があるので、いまの人事制度が正しいかどうかはよく分からないけれど、試行錯誤の上にそれがあるということを伝えれば、社員も納得するわけです。こうした経緯(歴史)をケーススタデイーとして残していくことが何より大事なのではないでしょうか。

ありがとうございます。社長・副社長が、それだけの時間を人事に、人に使っているのは、やっぱり魅力的な会社だと思いますし、また将来が楽しみと言ったら失礼ですが、そんなふうに思います。貴重な時間をありがとうございました。

 

まるボウズ日記
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サイボウズ株式会社

■会社名:サイボウズ株式会社(Cybozu, Inc.)
■代表者:青野 慶久(本名:西端 慶久)
■創 立:1997年8月8日
■所在地:東京都文京区後楽1-4-14 後楽森ビル12F
■URL:http://cybozu.co.jp/
■事業内容:
・インターネット/イントラネット用ソフトウェアの開発、販売