経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.004 ライブレボリューション(増永 寛之 氏)

ライブレボリューション(増永 寛之 氏)

モバイル広告や経営者向けのメールマガジン「プレジデントビジョン」を発行しているライブレボリューション。そのビジネスモデルはもとより、「魅力的な企業ランキング」(ジョブウェブ社)で2年連続№1に選ばれるなど、就活生から圧倒的な支持を集めている同社の増永社長に新卒採用の取り組みについて語っていただきました。

樋口:
今日は特にベンチャー、中小企業の経営者に対して、御社のここまでやってこられた新卒採用の取り組みについて3点ほどポイントをあげてアドバイスをいただきたいと思います。

増永:
そうですね。まず、第一に会社自体を良くすることです。ただし翌々年4月度の新卒採用活動というのは、10月くらいからはじめるわけで、そこに間に合うように会社を劇的にスピーディーに変えてゆくのは困難でしょう。私どものケースでは、2005年4月に会社の改革をスタートし、翌年の2月からはじめての新卒採用を始めましたので、当然ながらまだ改革しきれていない状態でした。できるところから着実にやっていこうと考えたときに、まず変えなければならないのは社員の行動や言動といったものなのですが、つまるところ社長の考え方です。
社長の考え方自体はその気になれば1ヶ月もあれば変えることができると仮定して、それ以外にというとやはり一緒に働く人です。彼らの行動や言動を変えるために、いわゆる会社の理念・価値観を明確に打ち出しました。そう宣言したことで、結果として合わない人は辞めていきましたが、それはそれで構わないと割り切りました。

よくわかります。

そうすることで、新入社員が入っても早々にがっかりすることは減ります。入社して 一番がっかりするのは、「こんな人たちなのか」「こんな扱われ方をするのか」等々、人の問題だと思います。会社説明会はPRの場ですから、いいことを言わなければなりません。でも、それが嘘になってしまってはいけないわけですよね。“事実”と“現実”、これを語らなければならない。ということは本当に「いい会社」でなければいけないわけです。ですから私たちの場合であれば、4月に改革を始めて翌年の2月に会社説明会を始めていますので、約10ヶ月という短い期間に会社(私自身の考え方や当社のメンバーの行動や言動等)を変えていきました。
多くの採用担当者は、作り話といったら語弊があるかもしれませんが、会社の良いところを何とか見つけ出して、それを膨らませてアピールしているのではないでしょうか。もちろん学生側はそれを見抜く術がありません。ですから、その言葉を信じて入社してしまいます。ところが、入ってしまったらバレますよね。そうしたことをなくすにはどうしたらいいのか、ということを突き詰めて考え、実践しています。
弊社の採用担当者がいつも言うのですが、「結局のところ、いい会社だから採用がやりやすい」ということです。要するに、嘘をつかなくてよいという状態があるべき会社の姿なので、嘘をつかなければならないような現状をいかに解消するか、そこをいつも心掛けています。

まずは会社を変えるという話からスタートされたわけですが、方向を明確にする、つまり未来に対する価値観を明確にしてみんなに支持を問い、一緒にやっていきたい人、辞めたい人をはっきりさせていく。そして、その理念をそのまま学生にもぶつける。いい会社をつくるというのは、つまるところこれを回すことだと思っていいですか?

そうですね。よい会社をつくって、よい人達を集める。それがひいては本当によい会社となるということです。

会社をよくするというお話に戻るのですが。

はい。それを可能にするにはやはり他の会社と“明らかに違うよさ”を作る必要があります 。ライブレボリューションで言えば他社にはない社風。その社風は何からできているのかというと会社の仕組みです。例えば弊社には「怒らない」「ノルマなし」「順位付けなし」といったルールがありますが、こうした話をしても大体は信じていただけません。でも実際、社員はそれを実行して会社もよくなっていますから、明らかに会社説明会でアピールできるわけです。会社説明会の多くは、業界の地位や業績、あとは制度のよさといった話をすると思いますが、弊社はほとんど話しません。もちろん聞かれれば答えますし、ちょっとしたことは言いますが、そんなことは多分誰の頭の中にも残っていない。

残っていない?

もっと言えば誇れるほどもないですよ。当時の売上は7億、いまは27億ですが、そんなことは話にもならない。多くの学生は何千億円、何兆円という大会社を回っているわけですから、業績について話したところで響くわけがありません。

話を伺っていて、理念や価値観を明確にするというのは、いまいる人たちにとって必ずしも居心地の良い話ではないかもしれませんが、方向性を明確にして、同じことを学生さんに言っているのでぶれないのだと思います。

いい会社の定義は、人によって当然違うと思います。ただし、私の意識はいつも「自分が学生だったらとか、新入社員、社員だったら」という発想からスタートしています。それを実現するためには、残り10ヶ月間で何をやらないといけないのか、何をすればそれが事実ですと公言できるのかを突き詰めて、必死にやるしかありません。

そこまで徹底できるところがすごい。それも短い期間にそれをやり切ったところが同じ経営者として純粋にすごいなあと思いますね。

もちろん、いまお話したことは、この何年間かでやってきたことをまとめてお話ししていますが、いくつかは(初年度の)会社説明会までに実現しました。