経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.006 ライフネット生命保険(出口 治明 氏)

ライフネット生命保険(出口 治明 氏)

樋口:
最後の質問になりますが、出口社長の採用についてのお考えについて教えてください。面接の中で出口社長は何を重要視されていますか?

出口:
ベクトルが一緒であるということです。最近は入社を希望される方にはだいたいこの「直球勝負」を読んでもらうようにしており、この本を読んだ上でライフネットで働きたいと思うかどうかを聞いています。しかし働いていただく上である程度の能力は絶対に必要ですので、正確には、ある程度の能力があることを前提にして、その上でライフネットで働きたいという意欲があることを重視しているといえます。仕事をリレーに例えると分かりやすいと思います。

リレーといいますと?

どれだけやる気があっても、100メートルを20秒もかかるような人を入れたら、それでは勝負にならないですよね。ですから、周りとの勝負をするには少なくとも100メートルを13秒前後で走れる人を入れないといけない。ただし、13秒前後で走れるというようなある一定の能力さえあれば、最終的に私が確認するのはなぜこの会社で働きたいと思うのか、やる気はあるのかというベクトルだけでよいと思っています。また、それに加えて当社では採用の段階でチームのメンバーにできるだけ会ってもらうようにしています。先ほどもお話ししましたが、仕事はチームで動くものでチームごとに強い石垣を作る必要があります。そのために選考の途中でチームのメンバーに会ってもらい、「こういう人と一緒に働きたいですか」と聞き、双方が一緒に働きたいと思えるかどうかを確認するようにしています。いくら13秒で走れてやる気があっても、今いるチームの10人が全部嫌いだという人は、どうしようもないですからね。極端な言い方をすれば、当社が採用をする際に確認するのは、一定の能力、一緒に働くチームの人間が「この人を採用してください」と言うかどうか、ベクトルの3つだと言えます。

愚問かもしれませんが、以前いらっしゃった日本生命といまの御社を比べると、その「13秒」に当たる能力は何か大きな違いはあるのでしょうか?

はじめは日本生命を13秒だとすると、ライフネットは標準タイムを15秒とか16秒に置かなければいけないだろうとずっと思っていました。業界のトップ企業で高い給料を出せる会社と、出来たばかりのベンチャー企業で給料もそれほど高く出せない会社を比べると、同じ質の良い人材が集まるとは普通思わないでしょう。しかし、蓋を開けてみると同程度でした。むしろライフネットのほうが上かもしれないと思いますね。例えば、当社には常勤役員が5名いますが、全員海外で3年以上生活をしています。全社員は50名しかいませんけれども、まったく英語を苦にしない人が10名以上、全体の2割から3割ほどいます。これ一つをとっても古巣よりもはるかにレベルが高いと思います。更に、バイタリティの高さも当社の方が上だと思っています。この前の日曜日は佐渡島で行われた自転車レースに社員3名が行って、210キロと130キロと走って徹夜で帰ってきました。その他にも50名の組織で運動部が6つぐらい勝手にできています。そうした点を考慮すると、前の会社とそれほど100メートルの速さのレベルは変わらないと思いますね。

なるほど。15秒でも仕方がないと思っていたのに13秒以下の人を集められているというのは、やはり社長の理念やビジョンが分かりやすく、共感する人が集まったからでしょうか?

そうかもしれませんね。やはり理念重視で徹底的に尖ったままで妥協しなかったことが一つの要因であると思います。それと、私と歳も離れ、キャリアのバックグランドも異なる岩瀬(岩瀬 大輔氏 ライフネット生命保険 代表取締役副社長)の組み合わせが、結果的に良かったということもあると思います。

なるほど。ありがとうございました。出口社長がこれまでに考えに考え抜いたお話を今日は伺えたと思うので、とても勉強になりました。

 

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ライフネット生命保険株式会社

■会社名:ライフネット生命保険株式会社
■代表者:出口 治明
■所在地:東京都千代田区麹町二丁目14番地2 麹町NKビル
■URL:http://www.lifenet-seimei.co.jp/
■事業内容:  生命保険業