経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.010 株式会社コーチ・エイ(鈴木 義幸 氏)

株式会社コーチ・エイ(鈴木 義幸 氏)

組織のリーダーを育成し、リーダーシップを発揮することを支援しているコーチA。100名のプロフェッショナルコーチを擁するコーチングファームとしての採用・組織運営について伺いました。

樋口:
御社ではほとんどのスタッフの方が「コーチ」というプロフェッショナルな職種で働いていらっしゃるとのことですが、そのコーチの方々の採用について教えていただけますでしょうか。

鈴木:
弊社には今、ちょうど100名スタッフがいます。
2001年にもともと私がいたコーチ・トゥエンティワンという会社の法人事業部を分社化してコーチAにした時には9名でしたが、そこから年に10名前後の採用を積み重ね、現在に至ります。しかし、ここ2年は、採用数が減っています。その理由としては、求める人材がこれまでの「コーチング研修ができる人材」から「エグゼクティブ・コーチングができる人材」へと変わっていることが挙げられます。
弊社のビジネスは大きく分けると「(1)コーチング研修・トレーニング」「(2)コーチをする」「(3)事前調査・成果評価」の3つがあります。
これまでは、(1)のいわゆる企業の管理職の方向けのコーチング研修がとても伸びてきていたので、研修の講師ができる人材を採用してきました。 しかし、最近では、(2)のニーズが徐々に徐々に高まってきています。
特に(2)の中でも我々が「エグゼクティブ・コーチング」呼んでいる、主に企業のトップや執行役員など経営層の方々を対象として、組織におけるリーダーシップの向上を目的に1対1でコーチングを行うサービスが伸びてきています。
そのため、今後はこの「エグゼクティブ・コーチング」ができる人材を採用していきたいと思っているのですが、これができる人がなかなか見つからないというのが現状です。

少し質問が反れてしまうのですが、コーチという仕事は本来企業でいえばどのような方が担っている役割に当たるのでしょうか。それとも企業にとってこれまでにない機能なのでしょうか。

そうですね。これまでの企業にはない機能と言えるでしょう。例えて言うならば、ゴルフのコーチと役割は同じです。 私はこれまで22年間ずっと自己流でゴルフをやってきたのですが、1回もスコア100を切れたことはありませんでした。しかし、ゴルフのお付き合いも多くなり、上手くなる必要性が出てきたので、たまたまあるコンペで一緒になったプロの方にコーチを依頼したのです。その結果、そのコーチに2回習っただけでスコアが100を切れてしまったのです。自己流でやっていると、失敗してもその原因を考え克服するまでに時間がかかってしまいます。しかし、横で見てアドバイスをしてくれる人がいて、そのアドバイスに従った軌道修正ができれば上達は早いわけですよね。リーダーシップに関しても、ゴルフを習う感覚と同じように習うとよいだろうというのが私の考えです。これまでリーダーシップに関してはせいぜい本を読むくらいで、あとは経験と先人を見て学ぶという方が多かったと思うのですが、もっと気軽な気持ちでコーチをつけて習得するものだと考えていただいてもいいと思うのです。

確かにこれまで「コーチを付けてリーダーシップを習得する」という考えは一般的ではなかったと思うのですが、現在そのようなニーズが顕在化してきた要因は一体何なのでしょうか。

ニーズが顕在化してきた要因は色々あるのですが、大きな要因は2つ考えられます。1つは我々がニーズを作ったということ、もう1つは口コミです。もちろん最初はかなり宣伝・営業に力を入れていました。ただし、経営者同士にはネットワークがあり、「コーチAが良い」という評判が立てば、どんどん紹介が発生するのです。これらの2点は営業的な観点からの要因ですが、一方で導入してくださる企業様側に何か要素があるのかを考えると、共通項はいくつかあります。わかりやすい例で言うと、合併や企業買収する場合、また会社の中に派閥がたくさんあって今まで自分の執ってきたリーダーシップではどうもまとまらないという場合に、自分のやり方を見直したいということでお声掛けを多くいただきます。あとは経営トップだけではなくて、執行役員にコーチをつけたいというお話も多いです。その背景には各企業で執行役員の権限がとても大きくなってきているということがあり、執行責任者として執行役員がどのくらいマネジメントができるか、リーダーシップが発揮できるかによって、その事業本部の業績が変わってくるからでしょう。それほど経営者は執行役員のパフォーマンスを重要視しているのです。

おそらくこれまで経営者は孤独で「1人で悩め」とか、「失敗から学べ」という世界だったのが、コーチをつけることが新しい機能として付加価値を見出されたのでしょうね。また執行役員については非常に急がされて育てられているので、基本を教わったり、自分の本音を出したり人に相談をするという時間や機会が確かに少ないです。ですから、会社や個人がコストを負担してコーチをつけるニーズが増えているのでしょう。