樋口：
社長から見て、もともとマネジメント志向がある人材の中で、実際に現場でマネジメントができる人材は何が違うのでしょうか？

鈴木：
コーチという仕事は非常に高いクオリティでやっているけれども、いわゆるマネジメントタイプではない人はいます。
何が一番違うポイントかと言うと、ビジョンやミッションを自分で作って発信できるかどうかだと思います。コーチという仕事では、基本的にはもともと相手が持っているビジョンやミッションを明確にし、そこに行き着くためにどうするかという戦略を作っていきます。
そのため、コーチ自身が「自分はどうしたい」ということを発信する必要はありません。 しかし、会社の中でマネジメントをしていこうと思うと、自分のマネジメントしている組織がどの方向に向かうのか、どのようなビジョンを持っているのかを自ら発信しなければなりません。

いわゆるリーダーシップですね。御社で実際にマネジメントをされている方はリーダーシップが発揮できるか否かという点を見て選ばれた方々なのですね。

その中でも右腕になってほしいと思う人材は、かなり慎重に選抜しています。リーダーシップ以外に選ぶポイントとして、古い考え方なのかもしれませんが、自分を脇に置いて会社第一で考えられるかという点があります。一緒に会社を作っていきたいと思っていますから、自分の一生をかけて会社作りに参加してみようというコミットメントが感じられる人であってほしいと思います。幸いなことに、当社にはそういう人材が多く、その中でもその志向がより高い人材をマネジメントに選んでいます。

自分より会社を優先させるというのは、もともとの性格なのでしょうか。

自分が人生で成し遂げたいと思っていることと、当社が成し遂げようとしていることが非常に近い人は、公私の区別がなくなるようです。そのような仕事とプライベートの線引きが薄い人材と仕事をしていきたいと思っています。だからといって、別に家庭をおろそかにしてほしいというわけではないですし、プライベートも大事だと思っていますけどね。

会社の将来像や夢など、鈴木社長が大事にしている価値観を共有できているからそのような状態になるのでしょうね。もともとマネジメント意識の高い人材が多いとのことでしたが、社長自身が意識してマネジメントを行わなくても、各々が意識的に取り組めるため、組織も自然とできあがっていったということでしょうか。

いえ、組織はかなり手間をかけて作りこんできています。実は私自身はもともとコーチのプロになりたくてこの世界に入ってきたので、当初は経営者をやることになるとは思っていませんでした。
ですから、経営に関して勉強をしていたわけではなく、社員が10人から20人、30人、40人と増えてくることで、常に新しい壁や課題が生まれてくるそのたびに、課題をクリアしようとして組織をいじったり、誰をリーダーにすればよいのかを考えていました。人の会社の講習より自分の会社の組織作りの方が、やはり大変でした（笑）。

そうですよね。組織をつくるにあたって何か工夫した点はありますか？

ちょうど今年の１月から新しくカンパニー制を取り入れました。カンパニーごとにプロジェクトを持たせており、更にそれぞれに利益責任やメンバーへの育成責任があります。
人事など全社を通じてのコーポレート部門もあるのですが、これらは必要に応じてカンパニーをサポートするという役割を持たせています。このようにカンパニー同士で競争心を持たせた方がお互いに切磋琢磨でき、組織の向上につながるのではないかと思い、このような体制にしました。しかし、一方でカンパニーが独立していて全く協力関係がないという状態は避けたいと考えています。そのため、全社に対する取り組みが日常的に起こるようにカンパニーを横断したプロジェクトを積極的に立ち上げるようにしています。例えばあるクライアントの案件を実行するのに1つのカンパニーだけでは人数が足りないという状況があった場合、いくつかのカンパニーにまたがったプロジェクトを作るというケースは多くあります。また、純粋に会社を成長させることを考えるプロジェクトも同時に作っています。

研修だけではなく、日常的に人材を育成できる環境を整えているのですね。非常に興味深いお話でした。ざっくばらんにお話をしていただいて、本当にありがとうございました。

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