経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.013 三菱商事株式会社(藤田潔 氏)

三菱商事株式会社(藤田潔 氏)

樋口:
お話が変わって、子会社の社長としてのご経験についてお聞かせください。藤田さんは現在、三菱商事の人事部長でいらっしゃいますが、以前は子会社であるヒューマンリンクの社長をされていましたよね。ヒューマンリンクの社長としてのご経験は三菱商事の中にいた時とは大きく違ったものだったと思うのですが、現在人事部長の仕事をする上で、役に立っていることはありますか?

藤田
三菱商事の100%子会社ですので、金銭面での苦労はあまりありませんでしたが、やはり自分で会社を経営していく必要がありましたから、人材マネジメントや決済者としての責任ある立場に身を置くという経験は非常に貴重でした。こうした経験は大きな組織の中では出来ないことですから。

人材マネジメントというのは、三菱商事の中でも当然付きまとう問題だと思うのですが、また別な次元のお話なのでしょうか?

そうですね。ヒューマンリンクは85%が女性ですし、人材の入れ替えも頻繁にありました。すべて自分でおこなうわけではありませんが、スタッフが何にモチベーションややりがいを感じているのかにきちんと目を配り、一人一人個別に対応する必要があります。組織として個人に対してきちんと対応しなければならないという点では、三菱商事とは全く異なります。三菱商事の場合は「言わなくても分かるよな」で通じますし、一緒に飲みに行くことでコミュニケーションを図ることもできます。しかし、女性が多いとお酒を飲まない社員も多くいますし、そもそも全員と飲みに行くことなどできません。ですから、就業時間内にきちんと対話をするということがとても重要でした。

ヒューマンリンクでのご経験がなかったら得られなかったと思うものは何かありますか。

組織運営といっても、理屈ばかりではなく、気持ちの問題が及ぼす影響もとても大きいということがよく分かりました。ずっと三菱商事にいたらそうは思わなかったと思います。あとは、人は様々であるということも痛感させられました。同じような仕事をしていてもその人が持ってる考え方、仕事に対する取り組み、モチベーションアップの要因など違う点は多くあるのですよね。

多様な人材への対応が求められる環境で、藤田さんはどのように社員の方と関わっていったのでしょうか。

従業員が200名以上いましたから、全員とコミュニケーションをとるのは難しく、実際に私自身が密にコミュニケーションをとっていたのは直接の部下である17、8名でした。ですから彼らに対しては先ほど言ったような個人の違いを尊重したコミュニケーションの取り方については重点的に留意するようお願いをしていました。

その18人のマネージャーにとって、藤田さんはどのような上司だったとご自身では思われますか。

私自身はわりと言いたいことははっきり言ってきましたが、一方で感情の喜怒哀楽があまり見えない、分かりにくいと言われることもありました。実際その通りだと思います。私の場合、本当に自分が思っていることを率直に言うと言葉がきつくなってしまうので、きつくなりすぎないように距離を見ながら話していました。言葉が強いと、そのようなつもりはなくてもネガティブに受け取られることもあるので、その点については注意していました。

そのようなことを気遣うのは三菱商事の中ではあまり必要がないのかもしれませんね。

そうですね。基本的にみんな自分の言いたいことを率直に言うような環境ですからね。

最後に藤田さんの人事部長としてのビジョンがあれば教えていただけますでしょうか。

当社は来年6年ぶりに社長が交代すると言われています。社長が交代する時というのは会社が変わる一番大きな契機です。誰が社長になるかにもよりますが、そこで会社のビジネスモデルや組織、人事というのは必ず変わってきますので、その意を踏まえてどこまで実現できるかが自分自身の課題です。あとはこれからの会社を担う40歳前後の人材を育てることですね。

三菱商事における採用・育成や、ヒューマンリンクと三菱商事の違いなど非常に興味深いお話でした。ありがとうございました。

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三菱商事株式会社

■会社名:三菱商事株式会社
■代表者:代表取締役社長 小島 順彦
■設 立:1950年4月1日
■所在地:東京都千代田区丸の内二丁目3番1号 三菱商事ビルディング
■URL:http://www.mitsubishicorp.com/
■事業内容:
エネルギー、金属、機械、化学品、生活物資等多種多様な商品の国内・輸出・輸入および外国取引、情報、金融、物流その他各種サービスの提供、国内外における事業投資など