経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.015 株式会社イデアインターナショナル(橋本雅治 氏)

株式会社イデアインターナショナル(橋本雅治 氏)

デザイン性の高いインテリア雑貨などの商品企画・開発及び販売等で急成長を続けるイデアインターナショナル。デザインを通じた支援活動など事業の枠を広げて活躍する同社の代表取締役社長 橋本雅治氏に人事の観点から経営のこだわりについてお話を伺いました。

樋口:
御社は新卒採用をされていると伺っておりますが、採用する際に重視しているポイントやこだわりについて教えてください。

橋本
能力は高いに越したことはありませんが、当社はコミュニケーション能力の高さと人柄を重視しています。新卒採用では大体2,000名くらい応募が来るのですが、2010年度はその中から15名採用しました。最初に書類選考とペーパー試験をおこない、二次選考ではグループディスカッションをおこないます。その時にどんな発言をするのか、まとめ役を買って出るかなどのコミュニケーション能力を確認します。なぜこのようにコミュニケーション能力を重視するのかというと、仕事を進める上でこの能力がとても大事だと考えているからです。1人だけ能力が高くても周りと連携が取れなければ、組織として成り立ちません。個人事業主の方々はそれでも良いと思うのですが、会社は組織なので組織の中で力を発揮できる人材でなければ、いくら頭が良くても組織力の向上にはつながりません。この二次選考に合格した方に最後選考の面接に進んでもらいます。面接はすべて私が担当しているのですが、ここでどのような人柄なのかを確認しています。

一口に「人柄」と言っても「特にこんな人材が欲しい」という基準があると思うのですが、最終面接ではどのような点に注意して面接をされるのですか?

私は自分だけがお金を稼ぎたいという人間は成功できないと思っているので、人をサポートしたい、人に喜んでもらいたいという気持ちがあるかどうかを確認するようにしています。当社は、「自分が幸せになるのはもちろんですが、他の人も幸せにしましょう」というのが基本原理です。この面接でそういう社風を理解してくれるかどうかを摺り合わせるのです。それに加え、ポジティブかネガティブかということも見るようにしています。物事のとらえ方次第で、同じポテンシャルでも結果は全然違ってきます。やはり前向きなチャレンジスピリッツを持った人材の方が良い結果を出すことも多いので、この点も重要なポイントとしています。

物事をポジティブにとらえられる人材の方が、何か問題が起こってもすぐに解決に向けて考え出せますからね。御社は中途採用もされているようですが、新卒採用と中途採用の割合はどのくらいですか?

当社にはデザイナーや営業など様々な職種がありますので、各分野の優秀な方とめぐり逢えた場合は中途でも採用しています。ただし、採用の中心は3、4年前から新卒採用に移行しています。中途入社者に比べ新卒入社者は会社に対する考えがまっさらな状態で入社してきます。そのため、当社を一から知ってもらいながら、当社のカラーに合わせて育てていくことができます。一方中途採用者はどうしてもその前の企業のカラーがついていますので、一から当社のカラーを受け入れるという点では難しいように思います。そのため新卒採用が主になってきているのです。

私も中途採用の方は経験がかえって邪魔をしてしまい、逆に新卒は経験が無い分会社に馴染みやすいなと思っています。中途採用はかなり厳選されているようですが、その中でも期待以上に活躍する場合とそうでない場合があると思います。その違いとはいったい何なのでしょうか。

最も大きな違いはコミュニケーション能力です。中途入社をするということは、それまで違う組織・違う文化の中にいた人材が「イデア」というこれまでとは異なる組織・文化に入ってくるということです。その場合、まずイデアの企業文化を理解し、そのイデアの文化で生活している人達に対して同じ目線で話ができるかどうかが大事です。得てして当社に中途で入社する人材は優秀です。そのため、中には入社当初から社内の人材を上から目線で見てしまい、文化の理解以前に現状批判をしてしまう評論家に陥ってしまうケースが見受けられます。その点コミュニケーション能力の高い人材は、企業文化をうまく理解し、内部の人材とも同じ目線で話をすることができるのです。私はコミュニケーションの取り方ひとつで、部下や周りの人のモチベーションを変えられると思っており、話している内容がどんなに正論でも、人のモチベーションを上げられない人材は仕事が出来ないと判断しています。
また、活躍する人材に共通する要素として人間的に魅力があることが挙げられます。社内はもちろん社外とのやり取りにもこの要素は大きく影響します。私の経験上、お客様から仕事をいただけるかどうかは、人対人の信頼関係を作れるか、つまりいかにうまくコミュニケーションを取れるかどうかで大きく左右されると思います。もちろん良い商品や良い企画は重要ですが、それ以上に相手に「この人と一緒にやりたい」と思っていただけなければ、なかなか仕事は巡ってきません。逆に能力が高い人材でも会って話した結果「こういう人とは一緒に仕事をやりたくない」と思われたら、どんなに良い商品・良い企画であっても商談には結びつかないのです。

おっしゃる通りですね。ところで、橋本社長は入社後にその人材が活躍をするかどうかは、採用の段階で決まってしまうものと、入社後に教育をすることで変えられるものとでは、どちらの比重の方が高いとお考えですか。

五分五分だと思います。コミュニケーション能力など仕事を進めるための根幹となる部分はある程度採用時に見極める必要があります。ただし、実際に活躍できるかどうかは入社後イデアの企業文化に馴染み、当社で実績を出せる働き方を見いだせるかどうかが大きく影響します。もちろん面接時の見極めも大切ですし、このように入社後に学びとれるかどうかもとても大事だと思います。

入社後に変えられる5割に対し、御社はどのような働きかけをされているのでしょうか。研修のようなOFF-JTと、いわゆるOJTでは比率はどちらの方が多いですか?

研修も職種ごとに色々ありますが、実際に学ぶのはOJTの方が多いです。現場に任せてしまうと上司によって成長が左右される可能性が出てきてしまいますが、その対策として、私自身が部下側の話を直接聞くという環境を整えています。我々は上場したとは言ってもまだまだ小さい組織ですから、新入社員でもすぐに私と話すことができる距離にあります。上司に納得がいかなければ直接私が話を聞き、その上で上司が間違っているのか、それとも言って来た本人が理解不足なのかを判断し、説明してあげればいいと思っています。

社長自身が上司と部下の間を埋めるコミュニケーションをされるのですね。

できるだけその時間を取るようには努めています。もちろんなかなか時間が取れない場合もありますが、ランチの時間などを利用するなどしてそうした時間をなるべく作るようにしています。