樋口：
ハイウェイ理論とは具体的にどのような理論なのでしょうか？

橋本：
速い車を先に行かせることで、それより遅い車全体を引っ張ってくれるということです。ハイウェイには追い越し車線があります。追い越し車線に遅い車が走っていると道自体が渋滞してしまいます。この状況を組織に当てはめると成果が上がらなくなっていくということです。もしも自分が追い越し車線で走っている時に、後ろからもっと速い車が来たら道を譲るべきなのです。だから私は「この人の車は速い。」と思ったら、速く走らせるために昇格させます。それをすることによって、組織全体が向上していきます。もちろん追い越されたと悔しく思う人もいるとは思いますが、追い越された人自身も優秀な人が会社を引っ張って業績が上がることで恩恵を受けるわけです。逆に追い越された人が追い越した人を妨げようとすると、会社は停滞してしまうでしょう。これでは自分のプライドは守られるかもしれませんが、逆に業績が下がってしまうのでその人自身の幸せには繋がりません。

そのように細かく評価をおこない、評価の方向性を明確にされていると結果に不満を持たれる方はほとんどいないでしょうね。

中には納得しない人も稀にいますが、そういう人のために役員面接をおこなっています。役員もみな話し合った上で評価を下していますので、その内容をもとに直接我々が説明するのです。

とても社員の方の納得感を大切にされているのですね。そのような評価を経て職位が上がっていくと、管理職のポジションに就く方も出てくると思います。 ただし“職位が上がる”のと“管理職としての仕事ができる”というのは必ずしも同義ではないという場合が多いようですが、御社ではいかがですか？

おっしゃる通りですね。管理職に適した人材とプレーヤーとして優秀な人材は違うので、評価軸も別にする必要があります。当社では明確な制度はありませんが、個人に合わせてプレーヤーの人にはプレーヤーとしてのキャリアを積んでもらう道を用意しています。その際には面談を通じて、お互いに管理職としての適性に対する認識を共有した上で、今後のキャリアを明確に示すようにしています。

皆さんが評価や自分のキャリアの方向性に納得された結果として、会社全体が成長しているのですね。

当社はベンチャー企業ですから、人から仕事が来るのを待っている人では当社では活躍できません。自分でどんどん仕事を作っていくことが求められます。新入社員が入社した時によく「先輩や上司に仕事を振られたら、何のためにその仕事をしているのか理解して仕事をしなさい」と言っています。目的もわからずに言われたことをやるだけでは全く成長できません。言われたことをただ鵜呑みにするのではなく、仕事の進め方をはじめ、本当にその仕事が必要なのかというところから考えてやることが大切なのです。それができることがベンチャー企業であり続けるポイントであり、当社の仕事のやり方の基本です。

最初に人柄重視の採用というお話もあったように、御社にはオフィスの雰囲気からも人の良さとか優しさのイメージを感じます。その上で、今お話のあったようなベンチャースピリッツとのバランスをうまく取られているのですね。

どの企業にも共通することですが、このバランスは企業を維持・発展させる上でとても重要です。人の優しさも大事ですが、ただ優しくて甘いだけの企業では利益を稼げません。企業の目的は人を幸せにすることであって、それが本来の「営利企業」だと思います。利益は人を幸せにすることによるご褒美としてお金を得た結果であり、利益を稼ぐこと自体はあくまでも人を幸せにする手段なのです。その考え方は先ほども申し上げたとおり社内に浸透させています。

そのバランス感覚は御社の強みですね。

はい。バランス感覚と言えば、当社は右脳と左脳のバランスが取れている会社であると思います。当社は感性のある右脳型の人材も、逆に数字に強い左脳型の人材も採用しています。こういった右脳人材、左脳人材をミックスしてバランスをとっているのも当社の強みだといえます。当社はまだまだ150名程度の小さな会社ですが、現在色々な大手メーカーから商品開発のコラボレーションのお話をいただいています。これは当社の右脳と左脳のバランスを評価していただいた成果だと思っています。

どちらのお話も経営者としては悩ましいお話で参考になります。お話の端々から経営理念にもある「人を幸せにする」というこだわりと、ベンチャースピリッツのバランスが取れていることを感じ取ることができ、同じベンチャー企業の経営者として大変参考になりました。本日はありがとうございました。