経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.016 株式会社システムコミュニケーション(清水宣夫 氏)

株式会社システムコミュニケーション(清水宣夫 氏)

創立77年、セールスプロモーションの老舗であるシステムコミュニケーションズ。従業員80名のほとんどが新卒で入社し定年退職をするという高い定着率を誇る同社の代表取締役社長清水宣夫氏に自社の採用・育成や現代の人や組織のあるべき姿について伺いました。

樋口:
御社は創立77年という長い社歴をお持ちですが、ここまで会社を成長させる中でどのような人材を採用されてきたのでしょうか。

清水
実は私どもは長い間手探りの状態で採用を進めていました。今から40年程前は能力主義で、能力が高く、覇気がある人材を中心に採用していたのです。しかし、これは失敗でした。このような人材を10年近く採用していたのですが、社内が活性化する一方、トラブルが多く発生するようになってしまったのです。といいますのも、覇気があるのはいいのですが、統制がとれず、会社の都合よりも自分の都合を優先させる風潮が蔓延してしまったからです。その状況を見て、何か間違っていると考え、採用方針を変えることにしました。その後は能力のバランスが取れている人材を中心に採用をおこなっています。バランスの取れている人材はえてしてもの静かな人が多いので、今度は企業の活性力が落ちてきたのですが(笑)。しかし、そのようにして振り子のように組織の状態を揺り戻しで来たわけです。

採用する人材を変えることで、組織全体のバランスをとっていらしたのですね。ところでバランスの取れている人材というのは面接でどのように見抜くのですか。

面接で特に見ているのは「良い人間関係が築ける人材か」ということです。やはり、どんなに優秀だと思って採用しても、一緒に仕事をする社員とコンセンサスが取れないと能力は発揮できません。逆に周りとよい人間関係が築ける人材は、少々能力が低くても周りが助けてくれたり、機会を提供してくれたりするものです。たとえば、接客業でナンバーワンの売上を誇る人材は外見よりも、内面のよい人材だというのが常識です。結局その人の持ってる人間的魅力が売上に一番影響するのでしょう。

バランスの良さは人柄に出るということですね。それでは御社の場合、入社後に実際に伸びる人材はどのような人材なのでしょうか。

伸びる人材にはどの企業においても共通する3つの要素が備わっていると思っています。1つ目は真面目であり、それが持続すること。つまり、常に手を抜かない仕事ができるということです。2つ目に良い人間関係を築くことができること、3つ目に標準以上の能力があることです。この3つに加え、「自分の人生はこれでいこう」という志や軸をしっかりと持っている、要は根無し草ではない人材であるというのも大切な要素の一つです。

そのような要素はある程度面接で見抜けるものでしょうか。それとも入社後の教育によって身につけることができるものでしょうか。

判断は非常に難しいですが、半々だと思います。良い人間関係が築けるかどうかはある程度面接で判断できると考えています。しかし、志の有無という観点で今の新卒入社者をみるとほとんどが根なし草です。そのような状況ですから、面接時に志の有無やその方向性は求めにくいのが実情です。また、波がなく真面目に仕事に取り組めるかどうかは面接では判断できないので、実際に採用してみないことにはわからない部分です。

御社は営業職・制作職・業務職と職種により仕事内容が大きく異なりますが、教育に関してはどのようにされているのでしょうか。

極端に申し上げますと、私は研修はほとんど役に立たないと思っています。役に立つ研修をおこなうには(1)知識教育であること、(2)徹底したハードな研修であること、(3)試験があることの3点が必要だと考えています。その試験も研修直後だけではなく、3か月、6か月、1年と長期にレベルを保てるよう徹底しなければなりません。そうしない限り雨散霧消で、せっかく研修をおこなっても1年後には何も残らないという結果に終わってしまいます。また、試験をおこなうにしても、受験した本人が納得できるような試験評価システムがなければ、試験も形式的なものになってしまいますので、本当に効果のある研修にはならないでしょう。ただし、1つだけ例外があります。それは本人の気持ちが研修に対して前向きである場合、本人が研修の必要性と目的を理解し、意欲を持って参加している場合です。しかし、実際には「会社の業務命令で受ける」というような受け身な人が多いので、先ほど申し上げたような徹底した研修・教育・指導が必要となるのです。