経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.016 株式会社システムコミュニケーション(清水宣夫 氏)

株式会社システムコミュニケーション(清水宣夫 氏)

樋口:
やはり本人の意思というのは重要なポイントですね。その中で、特に社長ご自身が期待を持てる人材というのはどのような人材なのでしょうか。

清水
それは口に出してあまり物を言わない人材です。口でいろいろと「これは問題だ」「自分はやっているのに他の人がきちんとやっていない」と意見を言う人は、案外実際に行動しないものです。よく経済雑誌に企業の次期社長候補が一覧で載っていますが、実際に選ばれる人材は静かな人が多いです。逆に前に出て意見を言う目立つタイプの人材はあまり選ばれません。それは目立つタイプの人材は表の席では評判がよくても裏の席での評判があまりよくないからです。表の席でも裏の席でも評判がよい人材も中にはいますが、なかなか稀ですね。

難しいでしょうね。それは本当に高い次元のバランスですね。

最終的に選ばれる人材かどうかを決定づけるのはバランスだと考えています。つまり能力ではなく、人格だということです。実のところ日本は戦国時代からすでにトップに立つ人材には人格を求めてきました。お家騒動が起きる時も必ずそれが発端ですし、大河ドラマも結局人格に焦点を当てています。極端に言うと「戦国大河人格ドラマ」と言えると思うほどです(笑)。

人がついてくるかどうかは人格に大きく影響されるものであり、それは昔から変わらないということですね。
一方現在は変革の時代とも言われています。私自身もこれから日本はかなり変わっていくだろうなと思っています。今後は高度成長期とは違う人材が活躍する世の中になるのではないでしょうか。

そのとおりだと思います。私は今の日本は、「3回目の国難」だと捉えています。1回目は明治維新、2回目は敗戦で3回目が今です。なぜ今かというと、日本の政治がこれほど180度転換したことが、未だかつてないからです。これは日本の世の中のシステムが根本的に変わってしまった転換点だと考えています。普通の国だったら革命です。たまたま革命になっていないだけであり、革命に匹敵する程の出来事だという時代認識が必要だと私は思っているのです。
そこでこれからの方向性を考えなくてはならないのですが、今回はこれまでの2回と大きく異なります。それは目指すべきモデルがないからです。明治維新の際には西洋がモデルでした。明治維新は「和魂洋才」という言葉に代表するように、日本の魂をもって西洋を学ぶということと、富国強兵で欧米列強の植民地にならないという明確な国家目標がありましたし、それを誰もが納得できた時代でした。また敗戦の際には「戦後復興」という言葉重視になり、何とかもう一回戦前を取り戻そうということで全員一致していました。また日本の製造業の技術力を世界に通用するものにするという目標も復興と同じレベルで重視していました。これはもう執念とも言えるでしょう。この執念があったからこそ、今ここまでこれたのだと思っています。このように明治維新の時も終戦の時も、ともにモデルがあったのです。ところが現在は、経済規模のレベルにおいて日本は世界有数国の一つになっていますし、欧米の金融システムも事実上崩壊しています。そうすると何も目指すべきモデルがないのです。
このような時代背景を考えると、これから重要なことはモデルのない中でどのようにして新しいモデルを作るかということです。一部でブータン国王が主唱していると言われるGNH(グロス・ナショナル・ハピネス=国民幸福度)を今の日本の目指す方向であるという人もいますが、どのようなビジネスが人の役に立つのか、世の中にもてはやされるか、本当の意味での先見性のある開発開拓力が必要だと考えています。ユニクロがよい例だと思いますが、今後は企業自体が新しい形のマーケットを創っていく力がないと生き残れないでしょう。

社長のおっしゃるのはゼロから物を作っていくような創造力や、過去の前例にこだわらない柔軟性が必要だということなのでしょうね。今後の方向性やビジョンをもう一回ゼロから作るような時代だとも言えると思いますが、社長はそのような変化を前向きに捉えていらっしゃるのでしょうか。

起きてしまうのだろうから、対応していくほかに仕方がありません(笑)。こちらが嫌だと言っても、汽車は走って行ってしまいますから。極端に言うと、振り落とされないように乗っていかなければ、仕方がないですよね。

同感です。今回は人事の細かい話というよりは、世の中の流れと高い視点からどう人や組織があるべきかという話が多かったので、非常にお話を伺っていておもしろかったです。どうもありがとうございました。

CompanyData

株式会社システムコミュニケーションズ

■会社名:株式会社システムコミュニケーションズ
■代表者:代表取締役会長 清水 公明 | 代表取締役社長 清水 宣夫
■創 業:1933年1月
■設 立:1964年1月
■所在地:東京都中央区築地5-3-3 浜離宮ビル9F
■URL:http://www.systemcommunications.co.jp/
■事業内容:
消費者及び販売経路に対する各種販売促進の企画、制作、実施