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株式会社東レ経営研究所(佐々木常夫 氏)

樋口:
具体的にはどのようなことなのでしょうか。

佐々木
幼稚園の時に何を教えてもらったかと言うと、「人に会ったら挨拶をする」「みんなと仲良く遊ぶ」「嘘をつかない」「間違ったことをしたら勇気を持って謝る」ということです。しかし、愚直にこのようなことができる社会人はほとんどいないのではないでしょうか。自身は仕事ができなくても、なぜか部下から信頼され、虚心坦懐にトップに情報を流してくる人材は人間として信頼できる所があるからです。このような人材は組織を動かす時に大きな力を持ちますし、上から見ても心強い。会社の中に数人はこのような人材が必要ですね。

まったく同感です。
中小企業では景気の悪化の影響を受け、最近になってワークライフバランスや業務効率化を意識しだしたところが多くあります。そのような経営者に対し、何かアドバイスをお願いいたします。

私自身もまさに中小企業の社長ですが、ワークライフバランスは中小企業の方がやりやすいと思っています。なぜかというと、ケースバイケースで対応することができるからです。大企業だと個々の事情を勘案していると収拾がつかなくなるので、どうしても人事制度や育児休業制度といったスタンダードを決めて、一律主義になります。ところが中小企業はそのようなことは言っていられません。優秀な女性社員に子供ができたとなると、辞められたら困るので対応せざるを得ません。また中小企業の場合は、規模も小さく社員全員に目が届く範囲ですから、例外対応をしても「あの人なら仕方がない」と周囲の理解を得やすいのです。
当社の場合は社員の対応や仕事の任せ方、コミュニケーションの取り方まで全てケースバイケースです。逆にそれを一律で対応しようとしてもひずみが生じてしまいます。このような個別対応は一見大変なように感じますが、それも永遠に続くわけではなく、考え方が浸透すると手間がかからなくなります。以前は私自身が一人一人の社員と向き合うことに多くの時間を割いていましたが、今では問題があるときに社員から言いに来てくれるようになりました。
組織としては上意下達ではないのであまり良くないのかもしれません。上司がうっかり変なことをすると、部下が直接私のところに来ますから(笑)。しかし、社員が自ら透明性のある情報をあげてくれるようになったので、会社のために費やす時間はどんどん少なくなっています。

個々に対して時間を割いたことが、結果として効率化につながっているということですね。お話をうかがっていると佐々木社長の仕事の仕方には非常に強いスタイルがあると感じたのですが、どなたかそのような仕事のやり方を教えてくれた上司がいらしたのでしょうか。

やはり初めに配属された上司や先輩の影響強く受けていますが、何かを教えてもらったという記憶はありません。そういった意味では私に一番影響を与えているのは母親ですね。母は私の父である夫を早くに亡くして以来、働きながら私たち4人兄弟を育ててくれました。外で働いていたため、あまり顔を合わせる時間はありませんでしたが、会うたびに「世のため、人のために生きなさい」「嘘をついてはいけません」「仲間はずれは絶対にしてはいけません」とお経のように繰り返していました。「三つ子の魂百まで」という言葉がありますが、まさにその通り今でもその言葉は心の中に残っています。
私たち親子は接触時間自体は長いとは言えませんでしたが、素晴らしい信頼関係があります。信頼関係は時間の長さではなく、その人がどのような気持ちを持っていて、それをどのように相手に伝えているかが最も大きく影響すると私は考えています。

やはり若いころの体験と言うのは後々に大きな影響を及ぼしますよね。
本日は効率化と言う観点から部下や組織のマネジメントについてお話を伺うことができ、大変興味深かったです。ありがとうございました。

 

佐々木常夫 オフィシャルWEBサイト
http://sasakitsuneo.jp/

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株式会社東レ経営研究所

■会社名:株式会社東レ経営研究所
■代表者:代表取締役社長 佐々木 常夫
■設 立:1986年6月25日
■所在地: 千葉県浦安市美浜1-8-1 東レビル
■URL:http://www.tbr.co.jp/
■事業内容 :
 1.企業環境に関する調査分析・情報提供
 2.コンサルティング事業
 3.人材の育成・能力開発に関する事業
 4.ネットビジネス関連事業
 5.セミナー・研究会の企画・実施