経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.059 日本ヒューレット・パッカード株式会社(有賀 誠 氏)

人事施策に活きる、企業のカルチャー 日本ヒューレット・パッカード株式会社(有賀 誠 氏)

大切なのは、社員が「ハッピー」であること

樋口:
 “HP way”ですが、人事面ではどのような形で具現化されているのですか。特に、「人の定着」や「生産性向上」に関するものがあれば伺いたいです。

有賀:
 制度としては、「FWP(フレックスワークプレイス制度)」や「社内公募制度」があります。
 「FWP」とは、セキュリティが確保された場所であれば、上司の承諾を得た上で週に二回まで自宅などオフィス外で勤務することを許可した制度であり、時間と場所に融通を利かせることができます。通勤時間やお客様先への移動時間を削減することで生産性を追求し、成果に繋げることを目的としており、会議もオンライン上でできるため、多くの社員がFWP制度を利用しています。今後も法的に可能な範囲であればよりフレキシブルな働き方を採用していこうと検討を続けています。
 こうした人事制度の目的は、社員が「ハッピー」である状態を実現するためです。私たちの考える「ハッピー」とは、仕事以外の生活と当社でのキャリアを両立できるということです。ハッピーな人が集まってできた組織だからこそお客様をハッピーに出来るのだと思います。
 「定着」という観点でいえば、社員がハッピーであれば結果として当社で長く活躍してくれるのではないでしょうか。ただし、当社の外にハッピーになれる道があれば、それを無理に引き止めることはすべきではないと思います。

 社員のハピネスを最大化するということですが、何か定点観測をしたり自分たちで内省したりするアセスメントのようなものはお持ちなのですか。

 ボイス・オブ・ワークフォースという社員の意識調査を毎年やっています。80ほど質問があるのですがそれを毎回トラッキングし、良くなった箇所と課題のある箇所を明確化しています。

 そうなのですね。
 先ほどの「FWP(フレックスワークプレイス制度)」について伺いたいのですが、それは社員のポジションに関わらず使われているのですか。

 8割方の社員が何らかの形で使っていると思います。ただ、これがまさに当社らしいところなのですが、このような制度の運用は、会社や人事としてこういうふうにやりなさいと縛るのではなくて、社員とマネージャで相談して決めています。

 ルール活用の自由度を高めて、マネジメントに任せようということですか。

 そうです。例を挙げると、コールセンターのように一定時間席に座っていなければいけない仕事でも、日によっては要員に余力があるかもしれません。そうであれば、マネージャとの相談次第で「今日あなたは家でレポートを書いていてもかまいません」となる可能性はあります。当然、部下の状況に合わせてマネジメントしていく事が必要となりますので、それらをうまく見極めていく事もマネージャの大事な役割です。

 現場の直属の上司であるマネージャの裁量で、ビジネスにあった運用をするということですね。マネージャのトレーニングは大変かなと思いますが、裁量に任せてその中でうまく運用していくというのは根付いていますか。

 どこの会社にもある制度だと思うのですが、当社の社内公募制度がユニークなのは、上司に拒否権がないという点です。本人が希望を出し、希望する異動先の上司と面接を受けて合格したら、異動元の上司が口を出せるのは異動のタイミングだけです。
 だからこそ、当社では社内公募による異動が社員のキャリア形成に大きく寄与しています。