経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.059 日本ヒューレット・パッカード株式会社(有賀 誠 氏)

人事施策に活きる、企業のカルチャー 日本ヒューレット・パッカード株式会社(有賀 誠 氏)

全社員に与えられる、上司との「1 on 1」

樋口:
 その他に、例えばキャリア形成の点で、貴社を象徴するような取り組みをされていれば教えてください。

有賀:
 ボトムアップで提案された3つのキャリア形成プログラムが当社らしいですね。いずれも現場の社員からの提案に、経営陣が賛同し、予算をつけたというものです。
 1つ目が「エバンジェリスト・プログラム」です。これはいくつかの看板テクノロジーに対し、それぞれを知り尽くしたテクノロジストを育成し、ブランディングしようというものです。グローバルでは”ムーンショット”というサーバーや”オートノミー”というソフトウェアに対し、それぞれに技術者が紐付けられています。これを日本でもやろういう取り組みですね。
 2つ目に「OneHPEアーキテクト・プログラム」があります。エバンジェリストが縦に深いテクノロジストを養成する考え方であるのに対し、数多くのテクノロジーを網羅的に把握し、お客様のCIOのカウンターパートを担当できる人材を育てようというのがこのプログラムになります。
 最後の3つ目は、「輝き(次世代マネージャー育成支援プログラム)」です。これはマネージャになる一歩手前の社員を対象に、いざマネージャになった時に即戦力として活躍してもらうためのプログラムです。
(参考:人材育成プログラム│日本ヒューレット・パッカード

 今まで色々な会社を経験なさったと思うのですけれども、そのようなボトムアップで何かが実現した事例はありましたか。

 全くありませんでした。この会社で初めて知った取り組みばかりです。

 なるほど。その他、他の会社にない象徴的な文化をお感じになったことはありますか。

 コミュニケーションを本当に大事にしているところですね。
 私たちにはどの組織でも定期的に「1on1」で直属マネージャと社員が話す機会があります。コミュニケーションを真面目に真摯に、大事にしているのがすごいなと思いますね。時々転職して入ってくるマネージャでそういうところを大事にしない人は、気が付くといなくなっている。何か自浄作用のようなものが働くのか、かなり強いキャラクターの企業文化なのではないかと思います。

 有賀さん自身も1on1をされるのですか。

 はい。私も、2週間に1回シンガポールにいる上司と実施しています。私に使う時間があればもっと若いスタッフと話をしてやってくれ、私のことなんかほっといてくれ、と思うことはありますが。笑
 自分がそのような思いを持っているので、部下に1on1の強要はしていません。ただ、いつでも相談がしやすい環境を作ることには配慮します。例えば、私のスケジュール表はオンライン上でオープンになっており、どのスタッフでもアポを入れられるようになっています。
話の中身は、ビジネスからプライベートまで全てです。雑談に始まって、家族のこと、日本の市場のこと、役員人事のこと、組織のモチベーションのこと、人事チームのことなど、そのときによって様々です。

 決まったフォーマットでの堅苦しいコミュニケーションではない、とういうことですね。

 そうですね。全く堅苦しいものではないです。雑談だけで終わることもあります。

 それが続いている、というのは立派な文化ですね。