経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.060 Sansan株式会社(角川 素久 氏)

世の中の働き方を革新するために、自分たちの働き方も変えていく Sansan株式会社(角川 素久 氏)

「ビジネスの出会いを資産に変え、働き方を革新する」というミッションを掲げ、シェアNo1法人向け名刺管理サービス「Sansan」や個人向け名刺管理アプリ「Eight」を展開するSansan株式会社。
CWO 人事部長 角川 素久 氏に同社の組織や人材へのこだわりについて伺いました。

「生産性向上」が全ての人事施策の目的

樋口:
 まず初めに、角川さんの役職はCWO(チーフ・ワークスタイル・オフィサー)とのことですが、これはどのような経緯で生まれたものなのですか。

角川:
 役員会の中で、「働き方革新というものを会社のミッションと同等のレベルで考えよう」という話が挙がり、その時に決めました。
 私たちの働き方革新の取り組みとしてよく取り上げていただくものに、徳島県神山町の古民家をサテライトオフィスとして開設した「Sansan神山ラボ」があります。開設して二、三年くらい経った時に、この取り組みを引き続き継続するかどうかという話になりました。元々はエンジニアの生産性を高める目的でしたが、トータルで見ると、生産性向上という観点だけではあまり続けても意味がないのではないか、という議論があったのです。
 しかし、当社は「ビジネスの出会いを資産に変え、働き方を革新する」というミッションを掲げており、私たち自身の働き方革新のチャレンジは経営レベルでやるべきことだ、と再定義しました。これが2013年くらいのことです。その時に経営レベルのチャレンジならば誰かがきちんと見なければいけないということで、当時ずっと「Sansan神山ラボ」を監督していた私が引き続き担当することになり、そのときから”ワークスタイル”のWをとって”CWO”と名乗るようになりました。

 社内で実験するということはやはり大事ですよね。私もそこには強くこだわっています。
 貴社においても「生産性」は一つのキーワードなのではないか、と感じたのですが、例えばエントランスやオフィスの工夫は、生産性向上という観点での効果を実感なさっていますか。

 定量的に測ってはいませんが、効果は実感しています。
 私たちは、東京のオフィスもサテライトオフィスも社内の人事施策も全て、常に「目的は生産性だ」と言っています。ここで重要だと思っていることは、 軸をぶらさないことです。
 例えば「Know me!」という飲み会補助制度(※1)は、ある側面から見ると単なる飲み代を出す福利厚生です。ただ、そういった飲み会をすると社員同士のコミュニケーションが円滑になり仕事がやりやすくなります。その上で、私たちが「これは生産性向上の施策だ」と発信することで、社員はそれを体感的に理解するのです。もちろん副次的には、コミュニティ醸成や雰囲気づくりなどの効果があるのですが、様々な目的を同時並行で言わないというのもポイントですね。
 これはSansan神山ラボについても同じです。ある一面から見ると保養施設ですし、のんびり働けるので安全衛生健康施策の面もあります。ただ、メインが生産性の向上でそれ以外の全ては副次的な効果として位置付けています。
 このような雰囲気作りを意図して積み重ねることで、結果的に全ての判断が生産性向上を重視したものになっていくように思うのです。実際、肌感として、今のSansanにはこのような文化が醸成されつつあるように感じています。

 貴社のユニークな人事施策としては、寺田社長とのランチも有名ですね。

 「テランチ」という施策ですね、よく活用されています。社長と一対一で一時間半くらい話すわけですが、入社三か月後くらいに場が設けられます。メインのテーマは社員の強みについてですね。これは、「強みを活かす」という当社の人事の考え方を反映したものです。
 社員自身のモチベーションにつながるし、社長からすると現場の状況のインプットになっています。

 このような人事施策は角川さんが発案されるのですか。

 私がというより、役員の中で問題提起が起こり、すぐ「人事施策にしよう」という話になります。個別対応にするとそれで終わってしまうので、施策にして仕組みにしていこうという発想が根付いていますね。
 社長から「角川考えてみて」と指示をうけ、色々料理しながら形にしていくのが私の役割になることが多いです。

 ところで角川さんは、これまで人事のキャリアだったのですか。

 いいえ。Sansanの創業者の一人としてもう9年在籍していますが、自己紹介をする際は「開発と営業以外のことを担当してきました」と言っています。創立当初は、バックオフィス全般に加え、入力センターの運営やシステム開発の統括を行っていましたが、会社が大きくなるにつれて仕事を分担していき、結果として今は人事領域を担当しています。
 創業当時より0から作ってきたので、「働き方を革新する」という当社のミッションは染み付いていますね。



※1 参考:http://jp.corp-sansan.com/blog/dorayaki/2013/131217.html