経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.061 Institution for a Global Society株式会社(福原 正大 氏)|

変化の時代にふさわしい教育・育成を模索する Institution for a Global Society株式会社(福原 正大 氏)

資本主義を揺るがしかねない、AI(人工知能)の登場によるインパクト

樋口:
 このようなお話をお伺いする中で、Institution for a Global Society株式会社(以降IGS)のビジョンにも掲げられているグローバルリーダーとは何だろうと考えてみると、やはり自信を持つことはその一つの答えになるのではないかと思いました。

福原:
 仰る通りだと思います。私は全員がリーダーになれると考えています。なぜならば、自信があればポジティブな行動につながるからです。ただ、自信には2種類、ブランドにぶら下がることで得られる自信と、自らに根ざした自信があります。いうまでもなく、ここでのリーダーシップには後者が必要です。
 私自身、大学4年当時は前者で、就活を終え自分の入った企業があたかも一番のように思っていた時期があります。ゼミの先生に、他の銀行はどうか分からないが東京銀行は大丈夫、ということを口にしてしまい、怒鳴られたことがありました。曰く「お前のその小さい視点はどこから来るんだ、世界のため、日本のための貢献を考えるべきで、就職先が大丈夫だなんて言っている時点でお前の存在意義なんてない!」と。個として常に自信を持ち、社会にどう貢献をするかが大切であることは、ゼミの先生から教えていただきましたね。

 内面からの自信を持たせる上で大切なのは、「褒める」とか「強みを見出す」ということですね。一方、現場のマネジメントでは「弱みを鍛える」ということも必要で、そのバランスを保ちつつ育成するのは非常に難しいですね。

 難しいですよね。それはある種、「芸術の世界」「アートの世界」といっても良いかもしれません。今後AI時代に突入する中で、ここは代替されずに残る部分だと思います。
 これも含めて、私は教育人事がAIやITにとってかわることは絶対にないと思っています。それは、一人ひとりが違う人間で最適な教育法が異なるためです。最近遺伝子やコンピテンシーについて研究しているのですが、改めて個々人の差異は大きいと感じます。人が何を原動力に行動するかも異なりますよね。弱いところだけを叩いていい子もいれば、併せて強みをほめてフォローしないといけない子もいます。
 解が無い、1人ひとりと向き合うしかない部分だと感じますね。

 お話に挙がったAIについて質問です。今AIがとても注目されていて、あらゆる業務の生産性向上が期待される一方、単純労働が代替され、多くの失業を生むであろうことが問題視されています。この大きな流れの中で、私たちが身につけるべきこととは何でしょうか。

 人間性、人間的な魅力をどこまで磨けるかだと思います。同時に、幅広くかつ深堀された知識を持ち合わせていることも重要です。
 後者は、『人工知能×ビッグデータが「人事」を変える』で共著した徳岡先生(徳岡 晃一郎 氏・多摩大学大学院 研究科長/教授)がよく「Π(パイ)型人材」と仰っています。「T(ティー)型人材」はとても有名ですが、ディープな知識がひとつでは厳しい、二つは必要だということです。例えば私の場合であればファイナンス・統計があり、最近は教育を加えて二本立てにしています。英語だけでなくフランス語を足したことに近いかもしれません。やはりそのT型だと人工知能に勝てない可能性が高いんですよね。もちろん、知識・スキルレベルがΠ型というだけでなく、しっかりとしたコンピテンシーでもってそのスキルを活用できることも大切です。
 前者の人間性とは、もう少しベースの話です。価値観をしっかり持ち、誰に対してみても相手をよく見ながら人間対人間の関係を楽しめる力ですね。
 どちらのポイントも、AIの浸透によって、求められる基準が上がることは間違いありません。今の世の中でこのハードルを越えられる人材というのは相当少ないでしょう。効率性を追求する資本主義経済において、純粋に多くの人が必要なくなるわけです。例えばファイナンスにおいてフィンテックが注目されていますが、これが浸透すれば銀行員は今の100分の1で済んでしまいます。テクノロジーのもつすさまじい力がホワイトカラーに降りかかっているわけです。
 これに対するソリューションを、私は見出すことが出来ていません。失業だけでなく、政体・宗教・テロなどあらゆるところで資本主義が制度疲労を起こしている中で、AIの登場はそれを壊しかねないインパクトになるかもしれません。私自身そのスピードを上げてしまっている意識はあり、資本主義でない何か新しい価値観を人類が見出せればとは節に思っています。もちろん、お隣の中国・韓国ですら価値観が異なる中、新しい共通の何かを見出すことは簡単なことではありませんが。