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変化の時代にふさわしい教育・育成を模索する Institution for a Global Society株式会社(福原 正大 氏)

AI(人工知能)の力を借りつつ、採用・育成・教育をあるべき姿に近づけていく

樋口:
 少し別のテーマになりますが、企業から見た新卒採用について伺います。
 ご存知の通り、日本の新卒採用という仕組みはとても珍しく、毎年一定の入社者がいることで構造を安定させたり、流動が少ない閉塞的な採用マーケットにおいて学生のうちに優秀層を獲得したり、会社に新しい風を吹き込んだりと良い点も多くあるのですが、近年そのコストパフォーマンスが下がっているように感じています。例えば、価値観の乖離が激しくそれが離職に繋がったり、そもそも学生の質が下がったりしているということです。
 この傾向は、将来的にどうなっていくとお考えでしょうか。

福原:
 私も新卒採用が今のレベルで続いていくのは難しいと思っています。これからは経験者を採ろうという動きがより加速していくのではないでしょうか。実際前職でも、アメリカ人の上司は「新卒採用とか馬鹿なこと考えるなよ、あんなコストパフォーマンスの悪いものはないんだ」と言っていました。
 一方で、日本の新卒採用には、社会・会社というコミュニティの一員として若者を受け入れ、そして育成する社会貢献的な側面があり、これはとても意義深いことだと思います。アメリカのように、必要な人材を機能的に採用するのとは違うよさがありますよね。
 ただ、どうしても今後体力のある企業が減ることで、新卒採用を続けられる企業は減っていくでしょう。今の新卒採用の仕組みはコストがかかりすぎるため、今後どうすべきか考える時期に来ていると思います。
 コストを下げつつマッチングの高い新卒採用を実現する上でもAIの活用は有効です。まさに今、実験しながらマッチングのシステムを構築しているのですが、例えば有名な企業が採るべき学生として有名ではない地方の大学生の名前が上がるということが実際におきています。これがうまくいけば、企業は高いコストをかけてマス(全体)にアプローチする必要がなくなります。
 このシステムをより本質的に活用するためには、そのデータを入社後の育成にも活用することも重要です。データ上で育成上の伸びしろまで把握できれば、新卒採用におけるマッチングはより精度が高く意義深いものになると思います。  

 確かにそうですね。
 福原さんは、学習塾との提携を通じ、中学生・高校生・大学生への教育にも携わっていらっしゃいますが、彼ら・彼女らに対してはどのようなことを教えていらっしゃるのですか。

 まず自分に自信をつけさせるということを一番大切にしています。同時に、価値観というものに向き合わせ、「自分とは何か」「Who are you ?」なる問題を解きなさい、ということを常に言っていますね。そのためには哲学書を読むのが一番良いと思っているので、それを題材として与え、考え続けさせています。
 この問いは「働くことはなんなのか」「何故大学に行かなくてはいけないのか」にもつながるもので、中学・高校時代にこれを考え続け、価値観を明確に持ってほしいと思っています。まさに、先ほど樋口さんが仰ったリーダーシップ3要素の1点目、「自己理解」を明確にすることに繋がるわけです。
 残り2点、「エネルギー」と「フレキシビリティ」の部分は未だ手をつけられていませんが、とくに2番目は今後注力していきたいと考えています。というのも、私は様々なところで海外大学への留学を進めているのですが、そのほうがエネルギーを発揮できる子が多いと感じているからです。勉強しなくてよいことが日本の大学の標準になっていて、エネルギーを持った人にとっては揶揄の対象にすらなっているわけです。そのため今後は「Who are you ?」を考え続けさせつつ、英語力をつけ、さらに持つべきコンピテンシーを身に着けられる教育を突き詰めていきたいと思っています。

 これだけ教育という部分に拘っていらっしゃるのは、何きっかけがあったのですか。

 教育が大切だという感覚は、例えば福沢諭吉の『学問のすゝめ』を読んでいたかなり昔から持っていましたが、直接のきっかけは伊勢神宮での出来事でした。
 笑われるのかもしれませんが、起業を決めた後、どの領域で起業するか突き詰めていた際、伊勢神宮内宮の独特な雰囲気の中で、雨上がりの空に一瞬光がかっと差し、その瞬間啓示があった気がしたのです。このとき、国のことを考えると全ての基本である教育こそが重要だ、コミュニティのために何かをしたい、と強く思いました。
 教育はあまり収益性が高いビジネスでないという特質もあり、GLOWや企業人事に関するサービスを展開した際に、人事路線のほうが良いのではないかという声もいただきましたが、人材会社ではなく教育会社であるという点には拘りたいですね。

 AI(人工知能)の浸透から人事・教育に至るまで、幅広くお話頂きありがとうございました。

 

 

 

CompanyData

Institution for a Global Society株式会社

■代表者:代表取締役社長 福原 正大 氏
■所在地:東京都渋谷区神南1-4-2 神南ハイム403
■URL:http://www.i-globalsociety.com/
■事業内容 :
-英語で考えるリーダー塾「igsZ」
-グローバル人材育成に関するアドバイザリー
-オンライン学習商材eSpireの開発・提供
-学生を対象とした成長支援,マッチングAIシステム「GROW」の開発・提供