経営者人事対談 > インタビュー記事一覧 > Vol.052 ソフトバンクモバイル株式会社、ソフトバンクBB株式会社、ソフトバンクテレコム株式会社(甲田 修三氏)

人材活用のために科学的な人事を ソフトバンクモバイル株式会社、ソフトバンクBB株式会社、ソフトバンクテレコム株式会社(甲田 修三氏)

今のソフトバンクに本当に駄目な人はいない

樋口:
こうした取り組みも、いろいろなタイプの人を活かしたい、全体として組織に貢献させたい、育てたいという部分につながるのですか。

甲田:
そうです。ある一部で駄目だと評価された人にも良さはあるでしょうし、そもそも本当に駄目な人は今ソフトバンクにいないと思っています。一時的には評価が低い時や成果が出ないこともあると思いますが、それが発生しないようにしてあげればいいと思うのです。個々のモチベーションの持ち方も違うでしょうから、そういったことをすべてデータ化し、人を活かすようなデータの使い方ができれば、本人にとってもいいですし、組織にとってもいいですし、人事にとっても、とても仕事がやりやすくなります。
今も、定期的な面談をはじめ育成について様々な取り組みをしていますが、その裏付けや根拠となる部分はまだまだ不足しています。ヒアリングや面談を通じ、勝手に思い込んでアドバイスをしていることがあるかもしません。

ある仕事においてパフォーマンスが良くない社員は、その場で上手に活かせていないというのが甲田さんのお考えなのですね。

大局を見ると同時に個も大切にしたいという事ですね。
一度評価が低かったから駄目だと決めつけることに対して、それで私たちは本質的にその人に向き合ってアクションをしたといえるのか、納得感があるのか、と疑問を持っています。幸いソフトバンクグループには、運用・保守やコールセンターから管理部門まで、様々な職種がありますから、キャリアチェンジのチャンスはいくらでも提供できるのです。どうやったら適材適所を実現できるかをデータ化を通じて考えていきたいですね。

対称的な考え方としてGEのマネジメントが挙げられます。GEでは常に評価の低い10%に退職を促し、新しい人材を入れるという発想があるそうですが、それについてどのようにお考えですか。

GEの考え方も正しいと思います。しかし、今の日本の雇用環境では難しいでしょうね。他社含め常に10~15%が流動していれば、社員としてはキャリアチェンジの道を社外に求めることができます。現状では、雇用を守りすぎることで転職できない環境ができていて、その結果自分に合わない仕事であってもしがみつかなければならず、最終的にメンタルな病にかかるという事態が起こっていると思うのです。今の日本でルールを変えずに、GEの制度を導入すれば路頭に迷う人が増えるでしょう。
その点で、日本の労働法には疑問を感じます。今以上に流動性を確保することで、その人本来の価値を試すチャンスを提供できますし、企業の業績も向上するはずです。

労働法を含めた環境の中で、ソフトバンク内での人材活用という考え方に至ったのですね。

労働法がトリガーではありませんが、まずはグループ内で良いことはすべて実践してみたいと思っています。

違う観点から質問します。先ほど次世代の幹部育成に重きを置いているというお話がありましたが、将来を背負うにふさわしい人材を採用するために、どのような取り組みをなさっているのですか。

採用方法では、2011年度からNo.1(ナンバーワン)採用というものを行っています。自薦、自画自賛でよいので、「私はナンバーワンだ」と思える成果を持っている人について別枠で採用しています。まずは、書類審査でナンバーワンの証を提案してもらって、それに合格したら1対3、4ぐらいで自由にプレゼンする機会を2度作ります。それで採用を決定します。

どのようなきっかけで始められたのですか。

一つは今までの短期間の採用活動で我々が本当に優秀な人材を見極められているか疑問を感じた事、異脳を集めたいということ。そしてもう一つは、何か一つに打ち込んで、世界に通用するレベルの人は、その情熱を仕事に向けるとすごい能力を発揮するだろう、という期待です。努力する精神力や、トップに立つためには不可欠であろう分析力が、大きな成果につながるのではないかと考えています。
過去No.1採用で入社した社員の中には、営業の中で、半年で営業成績が2、3位になった者もいます。

こうした新たな採用方法を導入し、手応えやこれまでの採用との違いを感じることはありますか。

強く感じます。まず、自信に満ちた人材、胆力のある人材が多いと思います。ソフトバンクアカデミア(孫 正義 氏による、後継者を育成する場)に新卒でも2~3名合格して入っていますし、内定者で応募して、入校を認められているものもいます。
また、始めて一年になるソフトバンクイノベンチャー(新規事業提案制度)で、内定者に応募のチャンスを与えたところ、最終審査に4件残っていました。これに通ると事業化に向けて進みだすので、入社後配属の際、「会社のCEO」という辞令を出すことになるかもしれません(笑)。

本当に、所謂大企業にないような、新しい挑戦に尽力されているんだな、と感じました。

私自身も今人事本部にいる多くのメンバーも、営業をはじめとする人事以外の経験をしたからこそ、「自己否定」のマインドを持てているのだと思います。過去を否定できる発想を持てたのはとてもありがたいです。

ここ1~2年で、営業やマーケティングをはじめとする、顧客と接してきた人が人事部に増えてきたように感じます。経営者が人事の重要性に気づいたのかもしれませんね。
甲田さんのような人事のトップの方はまだまだ少ないように感じますが、だからこそ新鮮で興味深いお話でした。本日はありがとうございました。

 

 

CompanyData

ソフトバンクモバイル株式会社、ソフトバンクBB株式会社、ソフトバンクテレコム株式会社

■会社名:ソフトバンクモバイル株式会社
■代表者:孫 正義
■所在地:東京都港区東新橋1-9-1
■URL:http://www.softbankmobile.co.jp/ja/
■事業内容 :
 ・移動体通信サービスの提供
 ・携帯端末の販売など、移動体通信サービスに関連する事業

■会社名:ソフトバンクBB株式会社
■代表者:孫 正義
■所在地:東京都港区東新橋1-9-1
■URL:http://www.softbankbb.co.jp/ja/
■事業内容 :
 ・ADSLサービスの提供、IP電話サービスの提供
 ・IT関連製品の流通・販売

■会社名:ソフトバンクテレコム株式会社
■代表者:孫 正義
■所在地:東京都港区東新橋1-9-1
■URL:http://www.softbanktelecom.co.jp/ja/
■事業内容 :
 ・固定電話サービスの提供
 ・データ伝送・専用線サービスの提供